自然関連開示×侵略的外来種

2026-07-29

自然関連開示×侵略的外来種 図版1

自然関連開示の指標に、3年近く「プレースホルダー」のままだったものがあります。

TNFDが2023年9月に公表した提言では、生物多様性損失の5大要因の一つである侵略的外来種について、コア・グローバル開示指標が暫定扱いになっていました。

その具体化に向けた討議文書が7月に公表され、8月5日まで意見募集が行われています。

IPBESによると、侵略的外来種による世界の年間経済コストは、2019年に4,230億ドルを超え、1970年以降、10年ごとに4倍になってきました。

生態系の問題にとどまらず、企業には、操業の中断、生産性の低下、資産の損傷、サプライチェーンへの影響などとして現れるリスクです。

今回、私が興味深いと思ったのは、指標の埋め方でした。

"IAS outcomes cannot be readily attributed to individual organisations."
侵略的外来種がもたらす結果を、個々の組織の活動に容易に帰属させることはできない、という認識です。

そこでTNFDは、コア指標を生態系の「成果」ではなく、企業が管理できる「行動」に置くことを提案しています。

問うのは、侵略的外来種に関するリスクが高い活動のうち、導入・定着・拡散の可能性を下げる適切な措置のもとで運用されている割合です。ここでいう行動とは、たとえば拠点間を移動する車両や重機の洗浄・検査、緑化に使う植栽種の事前スクリーニング、木製梱包材の国際規格への適合確認などです。

一方で、成果の測定を捨てるわけではありません。定着した侵略的外来種や、新たに確認された侵略的外来種の数・存在・分布面積などは、追加指標として残す提案になっています。

つまり、コア指標では、企業が制御できる行動を測る。 追加指標では、可能な範囲で自然の状態を捉える。

生態系の改善を個社の成果として厳密に帰属することは難しい。それでも、完全な測定方法ができるまで空欄にしておくのではなく、制御可能な行動を指標化し、成果情報と組み合わせて意思決定に載せる。

この割り切りと二層構造は、侵略的外来種だけでなく、他の自然関連指標を考えるうえでも重要だと思いました。

🔗 TNFD「侵略的外来種の指標に関する討議文書」
https://tnfd.global/publication/discussion-paper-on-invasive-alien-species-ias-metrics/

🔗 IPBES「侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価報告書」
https://www.ipbes.net/ias