ネイチャーポジティブ×自然指標の設計論

企業が使える自然指標と、自然を正しく捉える指標は、同じではありません。
4月にFrontiers in Scienceに掲載されたHarvey Locke、Johan Rockströmらの論文は、ネイチャーポジティブについて、種の数や生態系面積だけでは足りないと論じています。
生態系の健全性や連結性に加えて、水循環、土砂移動、動物の回遊など、自然のプロセスまで見なければ、本当に自然が回復しているかは分からない。
科学的には納得できます。
しかし、これを多くの企業に一律に測定させるのは難しい。
企業による実装を進めるNature Positive Initiativeは、自然の状態指標を、生態系の範囲、状態、種の絶滅リスクなど、共通して利用しやすい項目へ絞り込もうとしています。
ここには、避けられない緊張があります。
複雑さを残せば、企業は使えない。
単純化すれば、自然の重要な変化を見落とす。
自然は複雑ですが、企業制度は、比較可能性、再現性、監査可能性、コスト妥当性を求めます。
自然を企業の意思決定に接続するとは、この複雑さを消すことではなく、どこまで共通化し、どこから場所固有の評価に戻るかを設計することなのだと思います。
共通指標は必要です。ただし、共通指標を自然そのものだと考えてはいけない。LEAPアプローチで重要な依存・影響と地域を絞り込み、必要な場所では、生態系機能や自然のプロセスまで評価を深める。
自然関連情報の実装で問われているのは、指標を増やすことではなく、単純化の限界を理解したうえで使うことなのかもしれません。
🔗 論文(Frontiers in Science・2026年4月)
https://doi.org/10.3389/fsci.2026.1609998