保険×ネイチャーポジティブ

## 本文(LinkedIn上の文面そのまま)
7月17日、東京で開かれた「Insurance for Nature-Positive Leadership Forum」に参加しました。国連環境計画・金融イニシアティブ(United Nations Environment Programme Finance Initiative (UNEP FI) FI)と MS&AD Insurance Group が開いたフォーラムです。公式案内にも、自然に基づく解決策が災害リスクを減らし「長期的な保険可能性(insurability)を支える」とあります。
会場でいちばん腑に落ちたのは、この保険可能性が、バンカビリティ、つまり融資可能性にも関わるという順序でした。
金融機関は、融資対象となる資産への保険付保を条件とすることがあります。リスクが高まり、適切な条件で保険を確保できなくなれば、担保評価や融資条件は厳しくなり、投資対象としても扱いにくくなる。保険は、事故のあとに損失を補塡するだけでなく、事業や資産を投資できる状態に保つ金融インフラでもあるのだと思います。
では、自然はどこで効くのか。
UNEP FI の持続可能な保険原則(PSI)の自然ワーキンググループは、生態系の状態を、引受で使えるリスクシグナルに翻訳する「Climate-Nature Nexus Atlas」を開発しています。会場で示された整理では、12の災害種別と108の生態系グループを対象に、367の文献から、根拠の確認できる関係を148件抽出したとのことでした。森林や湿地、沿岸の生態系の状態が、洪水や火災、暴風のリスクをどう増幅し、あるいは和らげるのか。その関係を、リスク評価や引受判断で参照できる形に整理しようとしているわけです。
実例も紹介されました。カリフォルニア州のタホ・ドナーでは、コミュニティが計画的な森林管理を行い、そのリスク低減効果を保険モデルに反映しました。会場で示された数字では、森林管理を考慮しない場合と比べて、保険料は39%、免責金額は84%低くなっています。
ただ、この事例で強調されていたのは、値下げのほうではありませんでした。森林管理が行われていなければ、この地域では、そもそも保険が引き受けられなかった、という点です。
日本にも、将来の保険可能性を支える材料はあります。2020年から、不動産取引の重要事項説明に、水害ハザードマップ上の物件所在地が組み込まれました。2021年の法改正では、行政だけでなく企業や住民、農林業の関係者が流域全体で水害リスクを減らす「流域治水」の枠組みが整いました。林野庁でも、森林整備による水源涵養効果を定量化する評価手法の整備が進められています。ハザードや自然の機能を判断材料にするための制度とデータは、少しずつ整い始めています。
足りないのは、その情報を引受や与信の判断へ渡す回路のほうかもしれません。自然の状態を測る仕組みと、その情報を保険や金融の意思決定に使う仕組みを、別々に設計しない。私は、ここが要だと思っています。
🔗 フォーラム公式ページ(UNEP FI):
https://www.unepfi.org/industries/insurance/insurance-for-naturepositive-leadership-forum/
🔗 Wildfire Resilience Insurance(UCバークレー CLEE):
https://www.law.berkeley.edu/research/clee/research/climate/climate-risk-initiative/wildfire-resilience-insurance-policy/
## 画像内の文言
「保険可能性が、投資可能性を左右する」「自然の状態 → リスク評価 → 保険引受 → 融資・投資判断」。①なぜ保険が重要か(自然災害リスク↑→保険を確保しにくい→担保評価・融資条件が厳しくなる→投資対象として扱いにくい)②PSI「Climate-Nature Nexus Atlas」(12災害種別・108生態系グループ・367文献・148関係)③実例:カリフォルニア州タホ・ドナー(保険料39%低下・免責金額84%低下。重要なのは値下げだけではない=森林管理がなければそもそも引き受けられなかった可能性が高い)④日本にも"材料"はある(2020不動産取引の重要事項説明・2021流域治水の法的枠組み・林野庁の水源涵養効果定量化)。「足りないのは、"渡す回路"。自然の状態を測る仕組みと、その情報を保険や金融の意思決定に使う仕組みを、別々に設計しない」。「7/17 Insurance for Nature-Positive Leadership Forumでの学びをもとに作成」。
## デスク案との差分
詳細な逐語比較は未実施(画像・本文アーカイブを優先。post-summaryでの数値取得と合わせて2026-08-04に遡及アーカイブ)。
図版の文字情報
「保険可能性が、投資可能性を左右する」「自然の状態 → リスク評価 → 保険引受 → 融資・投資判断」。①なぜ保険が重要か(自然災害リスク↑→保険を確保しにくい→担保評価・融資条件が厳しくなる→投資対象として扱いにくい)②PSI「Climate-Nature Nexus Atlas」(12災害種別・108生態系グループ・367文献・148関係)③実例:カリフォルニア州タホ・ドナー(保険料39%低下・免責金額84%低下。重要なのは値下げだけではない=森林管理がなければそもそも引き受けられなかった可能性が高い)④日本にも"材料"はある(2020不動産取引の重要事項説明・2021流域治水の法的枠組み・林野庁の水源涵養効果定量化)。「足りないのは、"渡す回路"。自然の状態を測る仕組みと、その情報を保険や金融の意思決定に使う仕組みを、別々に設計しない」。「7/17 Insurance for Nature-Positive Leadership Forumでの学びをもとに作成」。