自動車の資源循環×経済安全保障


電動化と大型化が進むほど、クルマの環境負荷は「走っている間」から「作る前」に移るかもしれない。EUはその移り先を、環境の問題としてだけでなく、資源の輸入に頼る産業の弱さとして、規則の前文に書いています。
8月13日に発効したEUの使用済自動車規則((EU)2026/1738)に、こうあります。
「その結果、生産段階が使用段階よりも大きな環境負荷を持ちうること、そして欧州の産業が重要原材料の輸入にますます依存し、供給の途絶に対して脆弱になりうることになる」(前文(2)・拙訳)
車体が大きくなり、電子部品が増えるほど、必要になる金属も増える。だから負荷の重心が生産側へ寄る、という筋です。環境の話と調達の話が、同じ一文の中でつながっている。
規則が実際に適用されるのは2028年9月からですが、そこに置かれた要求はすでに具体的です。
・新型車のプラスチックは、2032年9月からの型式認証で再生材15%、2036年9月からは25%
・そのうち少なくとも20%分は、使用済み自動車や使用中に外された部品から出た再生プラスチックであること
・鋼材は、実現可能性の評価を経て、遅くとも2033年8月14日から
同じ規則は、その鋼材の目標を置くかどうかを何で判断するかも書いています。8つの考慮事項が並んでいて、その一つが「EUの開かれた戦略的自律性、気候・環境・産業の目標への貢献」です。
環境の規則の中に、安全保障と産業政策の言葉が、判断材料として書き込まれている。再生材を使えという要求が、環境負荷を減らすためだけでなく、輸入に頼らない材料の市場をつくるための手段としても置かれている、と読めます。
自然や資源の制約が企業の存続可能性に効いてくるとき、いちばん具体的な形はこれなのかもしれません。制約は「守るべきルール」としてではなく、「材料が手に入るかどうか」として現れる。
🔗 EU官報の規則本文: https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2026/1738/oj
🔗 欧州委員会の解説: https://environment.ec.europa.eu/news/new-rules-more-circular-european-automotive-sector-2026-08-12_en