自然関連の重要課題×資本市場


「森林伐採」を重大なESG課題に挙げた運用機関の比率が、国内株式のパッシブ運用で83%、アクティブ運用で27%でした。同じ日本株を持っていても、3倍ほど開いています。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が8月12日に公表した「GPIFの運用機関が考える『重大なESG課題』」に、その表があります。株式と債券の運用を委託している運用機関に、毎年、重大だと考えるESG課題を確認しているものです。
国内株式パッシブ運用の、環境まわりの数字を並べます。
・気候変動 100%
・生物多様性 100%
・森林伐採 83%
・水資源・水使用 67%
国内株式アクティブ運用では、生物多様性73%、森林伐採27%、水資源・水使用33%でした。気候変動は93%で、こちらはほとんど差がありません。開いているのは、自然側のテーマです。
数字の読み方には幅を持たせたほうがよさそうです。国内株式の対象は21機関で、パッシブとアクティブの内訳の機関数は資料に書かれていません。比率の刻みからすると、パッシブ側は多くない可能性があります。
そのうえで、同じ資料に、企業向けアンケートとの比較についてこう書かれていたのが目を引きました。
「投資家は市場全体またはポートフォリオ全体を想定しているのに対して、企業は自社の状況を踏まえて回答している」
自然の話は、自社の事業だけを見ると「うちにはあまり関係がない」に着地しやすいのだと思います。調達先は海の向こうにあり、水を使うのは工場の外にもあり、森林の減少は自社の敷地の外で起きている。市場全体を持つ側から見ると、その「外側」も、どこかの銘柄の中にあります。分散して薄まるものと、薄まらないものがある、ということかもしれません。
だとすると、自社の重要課題の一覧に森林や水が入っていないとき、それは「重要でない」という判断とは限らないように思います。自社の単位では、まだ見えていないだけ、ということがありうる。
ここで、もうひとつ前提があると思っています。運用機関が「森林伐採は重大だ」と答えられるのは、答えられるだけの材料が手元にあるからです。逆にいえば、自然に関する情報が企業の側から出てこなければ、投資家は重大かどうかを判断する前の段階で止まります。TNFDのような自然関連の情報開示の枠組みが進められているのは、この材料をそろえるためでもあるのだと思います。開示は報告書を作る作業に見えますが、実際には、いま見た「単位のずれ」を埋めにいく作業でもある。
GPIFは、前回の調査から重大と考える課題が大きく変わった運用機関について、その背景や考え方をスチュワードシップ評価の際に確認する予定だとしています。問いは、企業の側だけに向いているわけではありません。
自然や資源の制約を、誰の単位で測り、どの意思決定に渡すか。私は、この「単位」の設計が、これから効いてくると思っています。
みなさんの会社の重要課題の一覧に、森林や水は入っていますか。
🔗 GPIF「GPIFの運用機関が考える『重大なESG課題』」(2026年8月12日)
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20260812_esg_issues.pdf
🔗 企業側の回答はこちら(第11回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果)
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/stewardship/stewardship_questionnaire_11.html