森林×炭素ストックの測り方

2026-08-31

森林×炭素ストックの測り方 図版1
森林×炭素ストックの測り方 図版2

北方林が自分の身体に蓄えている炭素より、その木陰が凍らせたままにしている炭素のほうが、はるかに多いという推計が出ました。

7月27日に Nature Climate Change でオンライン公開された論文です。

北方林(ボレアル林)は、シベリアやアラスカ、カナダ北部に広がる亜寒帯の森林です。論文が対象にしているのは、そのうち地面が一年中凍ったままの「連続的永久凍土帯」にかかる部分で、この帯のおよそ4分の1が森林に覆われています。木の種類でいうと、4分の3近くがカラマツの仲間です。

その森林について、林冠(樹冠が空をおおっている層)がある場合とない場合で、季節ごとに融ける層の深さをモデルで比べています。

数字はこうです。

・林冠の断熱によって凍った状態に保たれている土壌有機炭素:約59 Pg(ペタグラム。1 Pg=10億トン)
・北方林の地上バイオマスに蓄えられている炭素:7〜19 Pg
・林冠が失われた場合、その59 Pgのうち約40 Pgが緩慢な融解で、約19 Pgが地盤の崩れる急速な融解(サーモカルスト)で、融解にさらされうる

裸地のシナリオでは、季節的に融ける層の厚さが50.2〜62.3%大きくなる。絶対値でいうと、林冠はこの層を0.87〜1.43メートル浅くしています。論文は、林冠がサーモカルストの発生を3〜18年遅らせるとも書いています。

森林の炭素というと、木が吸って蓄える量の話になりがちです。この研究が言っているのは、木が「持っている量」よりも、木が「日陰をつくり続けている働き」のほうが大きい、ということでした。論文はこれを、森林を失えばバイオマスの炭素を失うだけでなく、桁違いに大きな土壌の炭素が露出するという「非対称性」と表現しています。

自然の価値を評価するという文脈で読むと、これはやっかいな性質を持っています。ストックとして数えやすいのは木のほうで、実際に効いているのは影のほうだからです。測りやすい量と、効いている量が一致していない。

自然に関する情報を経営や投資の判断に渡すとき、私たちはたいてい「数えられる形」に直します。その変換のときに何が落ちるのか。この論文は、その具体例をひとつ示しているように読めました。

🔗 論文(Nature Climate Change・オープンアクセス/CC BY)
https://doi.org/10.1038/s41558-026-02692-z