自然関連情報開示×経営活用


開示の枚数を増やす作業と、開示を経営で使える形にする作業は、別のものです。いま足りないのは後者だと、環境省が来年度の研究テーマの文書に書いていました。
環境省が8月24日に公表した、令和9年度 環境研究総合推進費の「行政要請研究テーマ」です。全40ページ。行政が研究者に取り組んでほしい課題が番号つきで並んでいて、裏返せば、行政がいま足りないと考えている項目の一覧でもあります。企業の環境情報にかかわるものが、3つありました。
ひとつは、ネイチャーポジティブ経営に向けたライフサイクル影響評価手法です。背景の欄が、いちばん率直でした。TNFDの枠組みに沿った自然関連情報の開示に取り組む日本企業は世界をリードする形で増えている。その一方で、開示内容の多くは改善すべき課題が散在しているため、企業が戦略・経営に活かしている例は限定的で、投資・金融機関との対話など実用的な活用まで至っていない。注釈には、その課題が3つ挙がっています。
・生息地の変化や水消費といった主要な要素を網羅していない
・科学的な根拠に基づいた定量的な評価ができていない
・ライフサイクルの視点が欠けている
ふたつめは、環境保全につながる企業行動と情報開示が、企業価値にどう影響するかの実証研究です。環境に負荷を与える活動が企業価値を下げることは既往研究が明らかにしている。逆に、環境保全の行動が価値を上げるという指摘はあるが、実証的な研究は十分ではない、と書かれています。そのうえで、ISSB対応の開示義務が2027年3月期から順次開始される見込みであることを踏まえ、3年の研究期間の途中でも年度ごとに成果を公表してほしい、と付いていました。
みっつめは、Scope3の算定に使う原単位データベースです。物価変動を反映できていない。輸入製品の影響が入っていない。エネルギーと温室効果ガスだけを扱っていて、循環経済への貢献や生物多様性への影響を同時に見ることができない。
3つとも、開示をつくる部門だけの話ではないな、と思いました。原単位は調達とサプライチェーンの話ですし、企業価値との相関は経営企画や財務の話です。評価手法にいたっては、どの地域のどのサプライヤーを重く見るか、という判断そのものにつながります。
なお、この一覧は公募の予告にあたります。報道発表によれば、公募そのものは9月4日頃に公表を予定、第2回の公募説明会は9月11日(金)にオンライン開催を予定、とのことでした。
自然や気候の情報を、意思決定に使える形にするところ。私はそこに関心があるのですが、この3本は、その部分の宿題が名指しで置かれたものに見えました。自社の開示を、誰が何に使うために作っているのか。そこを一度確かめてみる価値はありそうです。
🔗 環境省 報道発表「令和9年度環境研究総合推進費新規課題『行政要請研究テーマ』について」(2026年8月24日): https://www.env.go.jp/press/press_05482.html
🔗 行政要請研究テーマ一覧(全40頁・PDF): https://www.env.go.jp/content/000424097.pdf