農地の多面的機能×交付金

2026-09-02

農地の多面的機能を支える3つの交付金のうち、2つで対象面積が去年より減っていました。

農林水産省が8月31日、令和7年度の「日本型直接支払」の実施状況を公表しました。農地や水路を地域の共同活動で保つための交付金で、多面的機能支払、中山間地域等直接支払、環境保全型農業直接支払の3つがあります。

数字はこうです。

・中山間地域等直接支払交付金:協定面積 618,049ha(前年度から42,907ha減)、交付市町村数 991(12減)

・環境保全型農業直接支払交付金:実施面積 84,795ha(前年度から5,820ha減)、実施市町村数 899(5増)

・多面的機能支払交付金(農地維持):認定農用地面積 2,329,276ha(473ha減)、対象市町村数 1,446(4減)

公表された増減から前年度の値を戻して割ると、中山間は6.5%減、環境保全型は6.4%減です。多面的機能支払のほうは、農水省が「昨年度と同水準」としています。3つは別の制度で、母数も単位も違うので、並べても足し合わせはできません。

私が気になったのは、減った理由の書き方でした。

中山間について、農水省はこう書いています。「第6期対策の初年度であったことに加え、高齢化や事務負担等を理由とした協定数の減少に伴い」。第6期対策というのは、この制度が期間を区切って更新される、その6回目のことです。

原典が挙げているのは、第6期対策の初年度であること、高齢化、そして事務負担です。交付単価や条件不利といった、ふだん語られる理由と並んで、手続きの重さがそこに入っています。

環境保全型のほうは「農業者の高齢化に伴う労働力不足による慣行農業への切替や離農などにより」。こちらは実施市町村数が5増えているのに、実施面積は5,820ha減っています。市町村数と面積は別のものを数えているので、どちらか片方で全体を語ることはできません。

環境保全型農業直接支払は、化学肥料と化学農薬を原則5割以上減らす取組と合わせて行う、地球温暖化防止や生物多様性保全等に効果の高い営農活動を支援するものだと定義されています。その実施面積が、6.4%減ったということです。

7月に、自然資本は「使いすぎ」だけでなく「使われなくなること」でも失われる、という環境省の指針案について書きました。人が手を入れ続けることで保たれてきた自然が、関わる人がいなくなることでも失われていく、という話です。今回の数字は、その「関わり続けること」を支えている側の実績にあたります。

自然の機能をどう評価するかという議論が国際的に進むなかで、日本ではすでに交付金という形で公的な支援が行われていて、その対象面積が減っています。いくら払うかを設計し直すのと同じくらい、事務負担のような地味な理由を減らすことのほうが効くのかもしれない、と思いました。

🔗 農林水産省 報道発表(2026年8月31日)
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyusan/260831.html
🔗 中山間地域等直接支払制度(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/