ネイチャーファイナンス×誰が見るか


投資家向けに書かれたガイドラインで、「自然を見るのは誰か」という主語が、意見募集を経て少なくとも2箇所で動いていました。投資家自身が分析することに加えて、
・投融資先に促す
・投融資先に確認する
という役割が、はっきり書かれるようになっています。
環境省が9月1日、「ネイチャーファイナンス実践ガイドライン」を策定・公表しました。投融資の判断に自然資本への考慮を組み込むための、投資家・金融機関向けの指針です。義務ではなく、任意で使うものとして書かれています。
同じ日に、7月21日から8月9日にかけて行った意見募集の結果も公開されました。意見を出したのは9者、のべ46件。
1つ目は、地域ごとの評価についてです。
・原案「このため、企業は、…評価を行うことが推奨される」
・修正後「このため、投資家・金融機関等は、投融資先企業が…評価を行うよう促すことが推奨される」
2つ目は、先住民・地域社会(IPLCsと略されます)との合意形成です。ここだけは、環境省が理由を書いて直しています。
「投資家・金融機関等が直接IPLCsと対話を行うことは困難と考えられるため、以下の通り修正します」
修正後、投資家が確認するのは「投融資先企業とIPLCs間で対話を通じた合意形成がなされているか」になりました。見に行くのではなく、見に行った人に確かめる。
これとは別に、意見のほうから出た指摘もあります。金融機関による自然関連の分析と開示は、投融資先企業の開示・顧客との対話・第三者データに依存していて、地域や拠点の情報を十分に取得できない場合がある、と。こちらは修正された箇所ではなく、実務側からの制約の申し立てです。回答は「段階的な対応を図ることも考えられる」でした。
主語の修正2件は、編集上の直しだと読むこともできます。理由まで書かれているのは、実際にはIPLCsの1件だけです。それでも、この3つを並べると、投融資の判断に自然を組み込もうとしたときに、見たいものが自分の手元にない、という順番が見えてきます。だから「見る」ではなく「促す」「確認する」になる。
私はこれを、弱さではなく設計の話だと受け取りました。環境情報化というのは、自然に関する情報を意思決定に使える形に変えることだと考えていますが、その実務は指標を増やすことではなくて、
・誰がそのデータを取るのか
・誰が維持するのか
・誰が確認するのか
を決めることに近い。分担が決まらないと、指標をいくつ並べても投融資判断には届かない。
その分担を実際に組んでみる場も、同じ9月1日から始まっています。投資家・金融機関等を対象にした「令和8年度 ネイチャーファイナンス実践モデル事業」の募集です。
・応募締切:10月1日(木)17時
・説明会:9月10日(木)13時/参加登録は9月7日(月)17時まで
なお、説明会への参加か録画の視聴は、応募の必須要件と書かれています。
🔗 ガイドラインの策定とモデル事業の募集(環境省・9月1日)
https://www.env.go.jp/press/press_05516.html
🔗 意見募集の結果(同)
https://www.env.go.jp/content/000426505.pdf