燃料インフラ×調達ルール

2026-09-07

燃料インフラ×調達ルール 図版1
燃料インフラ×調達ルール 図版2

災害のとき、燃料が現場に届かないことがあります。報告書が挙げていた理由のひとつが、平時の調達のしかたでした。価格だけで相手を決めていると、いざというときに依頼を受ける石油組合やSSが、必要な情報を持っていない。そういう話です。

経済産業省が8月24日、「新たな地域燃料流通に関する研究会」の中間とりまとめを公表しています。ガソリンスタンド(SS)をどう残すか、という報告です。

前提の数字はこうです。ガソリン需要は2004年度のピークから約27%減り、SSの数は1994年度の約6万か所から2025年度末の約2.6万か所へ、半分以下になりました。カーボンニュートラルへ向かえば、この需要はさらに減ります。一方でSSは、災害時に重要施設や緊急車両へ燃料を届ける「最後の砦」として位置づけられています。

74ページのなかで、いちばん具体的だったのはここでした。

停電した病院などに燃料を届けるとき、平時の調達を価格競争の一般競争入札でやっていて域外の事業者が落札していると、災害時に対応できないことがある。その場合は自治体経由で地域の石油組合に要請が回る。ところが依頼された石油組合やSSは平時の取引がないため、燃料タンクの容量や口径、配送ルートが分からず、供給に支障をきたす事例が多数発生している。そう書かれています。この箇所では、地域に事業者がいる場合でも、平時の取引がないと支障が出る、と書かれていました。

同じ仕組みが、災害以外でも止まっていました。参考として載っているのは、2026年2月のイランをめぐる中東情勢です。原油調達が逼迫し、燃料卸業者が量の確保に不安を持ったため、自治体の燃料の一般競争入札に参加を見送るケースが全国的に多発した。応札価格が予定価格を超えて不落になる例も出た。報道によるものとして、市営バスやごみ収集車の名前が並んでいます。

国内の災害と、海の向こうの情勢。原因はまったく違うのに、詰まった場所は同じでした。価格だけで相手を選ぶ契約です。

この官公需の論点への対応は、買い方から入っています。令和8年度の「官公需の基本方針」(4月21日閣議決定)に、重要施設や緊急車両の燃料については石油組合との随意契約を誠実に検討することが求められる旨が明記されました。財務・外務・農水・経産の4省は今年4月、公用車向けの燃料調達を、防災協定を結んだうえで東京都石油組合との随意契約に切り替えています。随意契約によらない場合も、価格だけでなく災害時の優先供給を要件とし、地域要件を設定したうえで入札にかける、とされています。

逆の意見も残っていました。会計法や地方自治法は一般競争入札が原則で、随意契約はその例外のさらに例外。長期的には入札のほうが安く済む場合もある。だから使い分けが要る、と。

地域の調達の話として読みましたが、この構図を国のレベルに重ねてみても、問いは同じ形で残るように思いました。価格だけで選べる時期が終わったとき、仕様書に何を書くのか。リスクをどこまで契約の条件として書き込むのか。環境や災害の話に見えて、調達の設計の話でした。

🔗 経済産業省「『新たな地域燃料流通に関する研究会 中間とりまとめ』を公表します」(2026年8月24日): https://www.meti.go.jp/press/2026/08/20260824003.html
🔗 中間とりまとめ(全74頁・PDF): https://www.meti.go.jp/files/000003554.pdf