経済の構造×自然と社会の費用

2026-09-07

経済の構造×自然と社会の費用 図版1

EYのグローバルNew Economy Unitが、「From extractivism to regeneration(採取主義から再生へ)」という報告書を出しています。採取主義といっても、資源をどれだけ掘ったかの話ではありません。利益は一部に集まり、費用は社会や自然が負う。その構造のことです。サステナビリティが伸びない理由を、企業の努力不足ではなく、経済の仕組みの側から測ろうとしたものです。

EYの自社調査で、2000年以降のG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)を、インフレ調整済みの金額で見た結果がこうでした。

・株主への配当は、従業員の報酬の3倍を超える速さで伸びた

・配当は、法人が納める税の2倍を超える速さで伸びた

・所得の不平等によって失われる分は45%増えた(社会全体の厚生を下げずに完全な平等にするなら、配り直す必要がある所得の割合として推計)

・生物多様性の損失にともなう費用は、少なくとも60%増えた

報告書はこれを「利益の私有化」と「損失の社会化」と呼び、採取主義(extractivism)と名づけています。

注意深いと思ったのは、この報告書が「採取主義を資本主義と同一視しない」と明記していることです。そうではなく、短期的に価値を取り込みながら、長期の繁栄に必要な社会・環境・制度の条件を削っていく、独自の、そして特定できる形の市場の失敗だと位置づけています。市場の失敗というのは、市場に任せておいても直らないゆがみのことです。

もう一つ。自社株買いは、この分析に含まれていません。脚注に、米国が世界の約7割を占めていて現象が偏っているため、とあります。そのうえで、含めれば私有化された利益と社会化された費用の差はさらに広がる、と自分で書いています。自分の数字を控えめだと言っている報告書です。

自然や社会の費用が誰の帳簿にも載らないことを、道徳の話ではなく市場の失敗として書く。EYの調査部門がこの言葉を使ったこと自体が、私には材料に見えました。

🔗 EY New Economy Unit 報告書(PDF):
https://www.ey.com/content/dam/ey-unified-site/ey-com/en-gl/insights/assurance/documents/ey-gl-neu-extractivism-report-06-2026.pdf

🔗 共同執筆者による解説:
https://timjackson.org.uk/ey-extractivism-report2026/