ネイチャーポジティブ×空間計画/自然回復の地図

2026-09-15

ネイチャーポジティブ×空間計画/自然回復の地図 図版1

イングランドの自然回復は、全土を48の区域に分けた地図から始まっています。英国環境・食料・農村地域省(Defra)の解説ページ「Local nature recovery strategies」が2026年9月14日に更新され、進み具合に合わせて書き直されました。48区域のうち43で戦略が公表され、5区域が作成中です(gov.ukの区域一覧・2026年9月2日更新)。

各戦略が持つのは2つです。

・生物多様性の優先事項を書いた文書(区域の状況、課題、優先順位、行動)

・区域の生息地の地図(いま重要な場所と、行動すれば効果の大きい場所)

作成は各区域の責任機関(自治体など)が担い、法律で定められた手順と国の指針に沿って作ります。提案された行動に法的拘束力はありません。そのかわりに、実施に向けた仕掛けが3つ置かれています。

・開発事業者が戦略に載った行動として生息地を作る、または回復させると、生物多様性ネットゲイン(開発で生息地の価値を10%以上増やす義務)で価値を数える単位(ユニット)が、1haあたり15%多く数えられる。事業者が戦略に沿った場所を選ぶ金銭的な動機になる、と解説は書いています

・地方計画や、新しく全国的に設けられる空間開発戦略は、関係する戦略を「考慮する(take account)」ことが法律上の義務になる

・すべての公的機関は、生物多様性の保全と向上の義務を果たすとき、戦略を「配慮する(have regard)」。原文では計画側と公的機関で言葉が使い分けられています

戦略は3〜10年ごとに見直しの発表が義務づけられています。

私が面白いと思ったのは、縛りを置く場所です。行動そのものは縛らず、地図に載った行動を「やると得になる」計算と、計画をつくる側が「見ないわけにいかない」手続きに縛りを置いている。自然の回復を、開発と計画の計算式の中に入れた設計に見えます。

日本では、企業などの取り組みを国が認定する自然共生サイトが610か所(2026年6月30日時点)まで増え、場所は点として増えています。イングランドの戦略は、どこで何をすれば効くかを先に地図にして、その地図に開発側の計算をつなげました。点から始めるか、地図から始めるか。どちらにしても、そのあとに開発側の計算や地域の計画をつなげられるかで、同じ「場所」の意味が変わってくるのだと思います。自然共生サイトに次に何をつなげるかが、日本側の問いになるように思います。

🔗 Defra 解説ページ(2026年9月14日更新): https://www.gov.uk/government/publications/local-nature-recovery-strategies/local-nature-recovery-strategies
🔗 区域と責任機関の一覧(公表状況つき): https://www.gov.uk/government/publications/local-nature-recovery-strategies-areas-and-responsible-authorities/local-nature-recovery-strategies-responsible-authorities