自然目標×調達

企業の自然に関する目標は、「どの海域のどの魚を買うのをやめるか」まで書く段階に入ったようです。企業の自然目標の国際的な枠組みSBTN(Science Based Targets Network)が9月15日、水産物に関する科学に基づく目標として初めて検証(第三者機関 Accountability Accelerator による独立検証)を通った3社を公表しました。英国のスーパー、デンマークの養殖会社、デンマークの漁業会社です。
1社目、英国のスーパーのウェイトローズ(ジョン・ルイス・パートナーシップ)の目標は、こう書かれています。
・モロッコのイワシ(北西アフリカ中央系群=資源を数える単位)は、2015年から改善を働きかけてきたが過剰漁獲が続いたため、2026年2月から調達を停止。資源の回復が確認されるまで再開しない
・北東大西洋のサバも、2021年からの働きかけの後、2026年から調達を停止し、回復が確認されるまで再開しない
・ホンジュラスのエビの調達先では、2029年までのマングローブ回復の事業に、資金と事業運営の両面で関わる
2社目、養殖会社ムスホルムの目標は、魚の餌に使う原料のうち、北東大西洋の指定海域(ICES小海区1〜9・12・14)のブルーホワイティングという魚に由来する分を、2029年までに2025年比で52.94%減らす、というものです。3社目の漁業会社イサフォルドは、北海のイカナゴとスプラットの漁で、2028年までに海底との接触を減らす漁具(制御できるトロールドア)に切り替える、という目標です。
「使う量を減らす」ではなく、海域と魚種と系群を特定して、やめる条件と再開の条件を書く。ここまで具体的な目標が、検証の対象になっています。
同じ発表では、日本企業として初めてキリンホールディングスと大和ハウス工業が、目標の前段(どこで何が重要かの評価と優先順位づけ)の検証を公表したことも紹介されています。こちらは水産物ではなく、淡水と土地についての評価です。大和ハウスは住宅・建設・不動産業界で日本初と、同社がSBTNに確認しています。あわせて出た報告書『Step Up for Nature』で、キリンの高岡氏はこう述べています(原文英語・私訳)。「自然を気にかけるべきか否かの議論ではなく、どの地域、供給網のどの部分、どの拠点が重要かの議論に移る」。
私は、自然の目標の解像度がここまで来たことが、開示の話というより調達の判断の話に見えました。10月13日にはSBTNの次の版(2.0)が出る予定で、同じ日にTNFD(自然関連の情報開示の枠組み)とネイチャーポジティブ・イニシアチブもコンテンツを公表する予定です。10月19日からの生物多様性条約のCOP17(アルメニア)に向けて、企業の自然目標まわりの発表は続きそうです。魚種と海域の単位で語れる調達のデータを持っているか。日本の食品や小売の側でも、先に問われる気がします。
🔗 SBTNの発表(9月15日): https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/news/leading-companies-advance-science-based-action-as-new-report-highlights-business-value/
🔗 検証を通った目標の一覧(SBTN Target Tracker): https://sciencebasedtargetsnetwork.org/company/target-tracker/