外来種×既存データの再利用/環境情報化

2026-09-18

外来種×既存データの再利用/環境情報化 図版1

北海道立総合研究機構を代表とする研究チームが9月1日、北海道のアライグマの生息密度を19年分のデータから推定した結果を公表しました。森林総合研究所、北海道大学、東京農工大学との共同研究です。

使ったのは、新しく取り直した調査データではありません。2004年度から2022年度まで、防除のために積み上がってきた捕獲数と、わなかけ日数の記録です。

わなかけ日数というのは、わなを何台、それぞれ何日設置したのかという捕獲の努力を示す指標だと、プレスリリースの用語解説にあります。そして、この指標がわかることで、捕獲努力を高めるほど捕獲数が増えることを踏まえた生息密度の程度を知ることができる、と続きます。

捕獲数だけを見ると、熱心にわなをかけた地域ほど多く見えてしまう。捕獲の努力で補正するから、地域どうしを比べられる相対的な密度の指標になる。

その19年分を、INLA-SPDEという統計手法で、約5km四方のメッシュごとに処理しました。計算の負荷が小さい構造を持つので、広い範囲を細かい網目のまま扱える可能性がある手法だと説明されています。研究チームは、これが外来種に適用された例は自分たちの知る限りない、とも書いています。

分かったことは3つです。

・2004年度に道央中心だった高い密度の地域が、2022年度には東西南北へ広がっていた
・密度が高いのは、河川や林縁、草地などの開けた環境、畑が広い面積を占めるメッシュ、冬の平均気温が高いメッシュ
・一度密度が高くなったメッシュは、時間が経っても高いまま維持されていた

この最後のひとつについて、優先的に対策を導入すべき場所と考えることができる、と書かれています。

7月に、自然関連の情報開示の枠組みをつくるTNFDが、侵略的外来種の指標を「成果」から「行動」へ動かした討議文書について書きました。自然がどうなったかは測りにくいから、代わりに何をしたかを数える、という設計です。

今回は、その行動の記録を、次の行動を決めるために使おうとしています。捕獲という行動の記録から、いまどこにどれだけ広がっているのかを把握して、それを「次にどこへ捕獲圧をかけるか」という判断につなげる。研究チームの言葉では、具体的な管理の戦略に役立てられることが期待される、です。しかも新しい観測網ではなく、すでにあった業務のデータで。

行動の記録から現状を把握し、そのデータを、次のより良い対策のための意思決定に翻訳する。環境情報化と呼んできた「整える・つなぐ・活かす」の、分かりやすい例だと思いました。

測ることの壁は、機器や予算の前に、その記録が「わなを何台、何日かけた結果の数か」まで残っているかどうかにあるのかもしれません。

🔗 プレスリリース(森林総合研究所):
https://www.ffpri.go.jp/press/2026/20260901/index.html

🔗 論文(Journal of Applied Ecology):
https://doi.org/10.1111/1365-2664.70525