森林×食料安全保障×統計

森が食料をどれだけ支えているかは、多くの国の統計では捉えきれていません。FAO(国連食糧農業機関)がランドスケープ・アライアンスと共同で9月15日に公表した報告書『Forests for food』(228ページ)は、森と食料の関係を世界の研究から統合し、その貢献の大部分が国の統計では見えていない、と述べたものです。
主な数字は次のとおりです。
・食料・エネルギー・薬などに使われる野生種は5万種を超え、うち少なくとも1万種が直接の食料
・50億人以上が、程度の差はあれ森に生計を頼る。農村部では森が世帯所得の最大20%を占める地域がある
・森に依存する一部の地域社会では、森の食べ物が総たんぱく質摂取の最大80%、食べる量(重さ)の半分近くを占める
・森のある集水域が大都市の85%以上に淡水を供給し、森は作物生産の35%を支える花粉媒介者の生息地でもある
・一方で2015年から2025年の10年間に年1,090万haが森林減少。増えた分を差し引いた純減少は、1990〜2000年の年1,070万haから2015〜2025年の年412万haに縮小
報告書が繰り返すのは、こうした貢献が「国の統計ではほぼ見えない」ことです。理由として、森の食べ物の世界共通の定義と分類がないこと、統計が市場に出る生産に偏り、自家消費や非公式の取引を落とすことを挙げ、12の提言のうち2つを「情報」に割いています。
日本には、きのこや山菜、木炭など木材以外の林産物を数える「特用林産物」の統計があります。令和6年度の森林・林業白書によると、令和5年の産出額は2,306億円で林業産出額の約4割、うち栽培きのこ類が2,199億円、山菜などの林野副産物の採取は35億円です。報告書には、日本で山菜採りが余暇として再び関心を集め、地域の観光や贈り物の文化にもなっている、という記述もあります。
私は、この報告書を食料安全保障の話としてより、「数えていないものは守る対象になりにくい」という情報の話として読みました。森の食べ物を国の食料消費調査に入れる、という提言は、日本の統計にも当てはまる問いに見えます。
🔗 FAO 報告書『Forests for food』(2026年9月15日・CC BY 4.0): https://doi.org/10.4060/cd3592en
🔗 林野庁 令和6年度 森林・林業白書「特用林産物の動向」: https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r6hakusyo_h/all/chap2_2_1.html