NbS×許認可の設計/規制と再生のずれ

自然の力で岸を守る工事が、産業開発や産業汚染を想定してつくられた規制で審査されている。ニューヨーク・ニュージャージー湾の河口で、規制する側と再生する側の関係者に聞き取りをした研究が、9月15日にSocio-Ecological Practice Research誌に出ました(CC BY-NC-ND 4.0)。
対象は、カキ礁で波を弱める、湿地に土を入れて高さを保つ、といった自然の仕組みを使って岸を守る構造物(NNBF=Natural and Nature-Based Features)の再生事業(原文は ecological restoration)です。著者らは2回のワークショップと41件の聞き取りから、規制上の障壁を12の類型に整理し、5つの改革案にまとめています。
私が興味を持ったのは、双方の価値観の違いの描き方です。
・規制側は、既存の干潟を再生側より高く評価する。ある規制担当者は「見た目が悪い、臭いという理由で干潟が別の生息地に変えられることがある」と指摘
・再生側は、設計と許認可に5〜10年かかる間に海面上昇で湿地が水没するおそれがある、と変化を根拠にする。規制担当者には静的な環境像を重視する傾向があり、論文は、法制度が行政の効率と公平のために動的な変化を扱いにくい、とも説明している
・場所ごとの再生の基準として、1970年代に作られた過去参照の地図が使われることがある。著者らは、港の環境がよかった時期の地図ではない、という趣旨を添えています
そして改革案の多くは、法改正ではなく役所の実務に寄っていきました。担当者の異動で失われる記憶を補うために、NNBF専用の申請書類と監視データの保管庫を作る。電子申請で、必要な書類がそろった「完全な申請」とは何かを明確にする。すべてを事前承認するのではなく、規制側と申請側が定期的に会い、新しい知見を設計に取り込む。
日本でも、グリーンインフラや自然再生の事業は、河川・港湾・自然公園と複数の制度にまたがります。ここで書かれた「規制は静的、自然は動的」というずれは、制度が違っても同じ場所に出てきそうです。自然を使う工事の許認可を設計するときの、1つの物差しになると思いました。
🔗 論文(Shtob et al. 2026・Socio-Ecological Practice Research): https://doi.org/10.1007/s42532-026-00265-0
🔗 NNBFの国際ガイドライン(米陸軍工兵隊・2021年): https://ewn.erdc.dren.mil/nnbf-guidelines/