地下水×衛星の測り方/環境情報化

人が水を汲み、ダムに貯め、森を畑に変えた場所で、水がどれだけ増減したかを従来より5〜10倍細かい解像度で描き直したら、40地域の増減の大きさは従来の推定より平均33%大きかった。減る側では、地下水の枯渇は従来の推定より深刻だと著者らは書いています。筆頭著者がNASAに所属する研究チームが、2026年9月14日にPNASで発表した論文です。
使ったのは、地球の重力のわずかな変化から陸の水の総量(地下水・土壌水・河川湖沼・雪氷の合計)を測る衛星GRACEとその後継機の、2002年4月から2025年11月までの観測です。従来は月ごとの地図をつないで傾向を出していましたが、この研究は2機の衛星のあいだの距離の変化という生データを23年分まとめて回帰にかけ、約12,000km²の細かさまで解像度を上げています(従来は12万km²超)。
分かったことを3つ。
・人の活動と結びついた強い増減が40地域で見つかり、期間中の減少は合計3,122ギガトン、増加は2,432ギガトン。減少はビクトリア湖の水量を超える
・農業の地下水灌漑と結びついた減少が特に深刻で、北インドは年32.4ギガトン、中東・北アフリカは年42ギガトンの減少。サウジアラビア中部の1地域だけで、同国の年間の再生可能な水資源の6倍以上が毎年減っている
・面積10万km²未満の7地域では、従来手法の過小評価は52%。小さい地域ほど、測り方の差が効く
一方で、増えている場所もあります。天水農業への転換と結びついて浅い地下水が増えた西アフリカのサバンナ、貯水池の充填、運河から漏れた灌漑用水が砂漠の地下に溜まったトルクメニスタン。どれも従来の解像度では見えにくかった、と著者らは書いています。
限定も1つ。この方法は時間変化を捨てて空間解像度を取っているので、年ごとの変動は追えません。長期の傾向だけです。井戸の観測が乏しく、正式な検証はできないとも書かれています。
私が思ったのは、「減っている」という結論は同じでも、数字が3割動くなら、水を使う側の計画も動く、ということです。ある地域の減少量を前提に取水の上限や工場の立地を考えているなら、その前提が動きうる。井戸のデータが乏しい地域ほど、衛星に頼ることになる。次の重力観測衛星は2028年の打ち上げ予定とのことです。
日本は40地域に入っていません。日本の地下水は、誰がどれだけ汲んでいるかの把握から、という提言を2026年8月に書きました。測る解像度と、把握の粒度。両方が上がって初めて、意思決定に使える情報になるのだと思います。
🔗 論文(PNAS・オープンアクセス): https://doi.org/10.1073/pnas.2600775123
🔗 NASA GRACE-FO(衛星の公式ページ): https://gracefo.jpl.nasa.gov/