自然の状態評価×騒音/環境情報化・生態系勘定

自然の「状態」を現地で評価すると、構造は見ていても音は見ていない。ノルウェーの評価データを使って2026年9月16日にConservation Lettersに出た論文は、その抜けを数字で示しています。
ノルウェー環境庁は2018年から、現地調査で生息地を100種類超の自然タイプに分け、状態を4段階(良い・中・悪い・非常に低下)で評価しています。研究チームはこの地図に、道路・空港・鉄道の騒音地図(昼夕夜の平均で50デシベル超)を重ねました。評価済み2,854km²のうち、騒音と重なる面積は39.74km²(1.4%)でした。
予想は「悪い」ほど騒音の面積が大きい、でした。結果はこうです。
・騒音にさらされた面積がいちばん大きかったのは、「良い」と評価された生息地
・評価面積に対する割合でも、「良い」は「中」よりやや高く、「悪い」と同程度(「非常に低下」だけは他より有意に高い)
野生動物の騒音への反応はおよそ40デシベルから始まるとされ、50デシベルは控えめな線です。植生や構造が保たれていても、音の環境が壊れていれば機能は落ちている可能性がある、と著者らは書いています。
私が実務的だと思ったのは、この抜けが現場の調査票だけの話ではないことです。国連の生態系勘定の標準(SEEA EA)は騒音を「騒音を減らす生態系サービス」としてしか扱っておらず、圧力(自然への負荷の要因)としては置いていない。EUの生態系状態評価の方法は、騒音を都市生態系にしか入れていない。しかも、生息地の断片化の指標に使っている道路・鉄道のデータは、音のモデルがない場合の暫定的な代理指標に使えるのに、騒音には使われていない。
提案はシンプルで、全国の騒音地図を現地調査のタブレットに載せる、というものです。新しい法律ではなく、既にあるデータ層を重ねる。
日本では、騒音規制法にもとづく自動車騒音の常時監視があり、2024年度は約963万戸の住居等が評価の対象でした。対象は住居です。同じ地図を自然の側に重ねたら何が見えるか。自然の状態を測る物差しを考えるとき、「測っていない圧力」は他にもある気がしています。光や熱も、この論文は候補に挙げています。
🔗 論文(Conservation Letters・CC BY): https://doi.org/10.1111/con4.70085
🔗 環境省 令和6年度自動車交通騒音の状況について(2026年3月10日): https://www.env.go.jp/press/press_03205.html