重要鉱物×国内製錬の助成/経済安全保障×資源循環

経済安全保障推進法にもとづく重要鉱物の「供給確保計画」は、2023年12月の1件目から2年9か月で11件になり、経済産業省が公表している助成額の目安を足すと約934億円になります。直近の2件は、タングステン(日本新金属・2026年9月7日認定・目安約20億円)と、フッ素(セントラル硝子・9月16日認定・最大約176億円)でした。
11件を認定日の順に並べると、中身が動いているのが分かります。リサイクルの実証から始まり、製錬設備の国内立地へ、そして最新の1件は国内のくずを製錬する設備へ、です。
・2023〜2024年:リチウムイオン電池のブラックマス(電池を砕いて出る黒い粉)からニッケル・コバルト・リチウムを回収する実証(三菱マテリアル、日本化学産業)、豪州の探鉱(住友金属鉱山・三菱商事)、ニッケルマット(製錬の中間品)の生産(日向製錬所)、ウラン濃縮(日本原燃)
・2025年:国内のニッケル製錬所の新設(日本重化学工業ほか)
・2026年3〜9月:タングステン粉末の設備(アライドマテリアル)、レアアースの製錬(信越化学、三徳)、タングステンの湿式精錬の増強(日本新金属)、無水フッ酸(フッ素の基礎原料)の製錬設備の新設(セントラル硝子)。5件とも製錬・加工設備の新設や増強です
なぜタングステンとフッ素か。経産省の「重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針」(2026年3月)は、タングステンの鉱石生産は中国が8割で日本が輸入する材料の大半も中国に依存、フッ酸は「ほぼ全てを中国から輸入」と書いています。フッ素は半導体のエッチング工程に、タングステンは超硬工具と半導体の配線に使われる素材です。
私が気になったのは、日本新金属の計画が新設ではなく、国内で回収したタングステンくずから中間原料(APT=パラタングステン酸アンモニウム)を作る能力を約2倍にする話だという点です。親会社の三菱マテリアルの発表では、秋田工場の能力を年間2,400トン(酸化タングステン換算)に引き上げ、年間約1,200トンの輸入中間原料を国内のリサイクル由来に置き換える。投資額は約80億円、操業は2029年4月の予定で、2030年度までにタングステン製品の製造拠点でリサイクル比率100%を目指す、とあります。
今回の助成は、鉱山でも備蓄でもなく、国内のくずを製錬する設備に付いています。資源循環が、環境対策ではなく供給網の話として扱われた実例だと読めました。セントラル硝子のほうは宇部工場に無水フッ酸の製造設備を新設する計画で、設備投資の詳細はこれからとのことです。
次の認定が何の鉱物の、どの工程に付くか。経産省のページの表に1行ずつ足されていくので、そこを見ていれば分かります。
🔗 経済産業省 重要鉱物の安定供給の確保(認定供給確保計画の一覧): https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/metal/index.html
🔗 三菱マテリアル ニュースリリース(2026年9月9日): https://news.mmc.co.jp/corporate/ja/newsroom/press/news20260909.html