電池リサイクル×原料の時間差/経済安全保障

住友金属鉱山が2026年9月14日、愛媛県の東予工場とニッケル工場に建設していた電池リサイクルプラントの竣工記念式典(9月11日)を発表しました。使用済みの車載用電池などからニッケル・コバルト・リチウムと銅を再資源化する設備で、原料処理能力は電池セル換算で年約1万トン。商業規模では国内初(同社調べ)とのことです。現在は試運転中で、NEDOのグリーンイノベーション基金事業の支援を受けています。
工程は、使用済み電池を無害化・破砕・選別した濃縮物(ブラックマス)を原料に、東予の乾式工程とニッケル工場の湿式工程、関東電化工業の高純度リチウム工程を組み合わせるもので、回収したニッケル・コバルトは同社の正極材の原料に戻す「電池to電池」を目指す設計です。
私が気になったのは、この工場を「いつ向けに」建てたかです。NEDOに提出された事業戦略ビジョン(2024年8月時点の計画文書)には、当時の認識として、こう書いてあります。
・日本の電動車から出る使用済み電池の回収は、現状で13〜20年後が大半を占める
・中古電動車の輸出も多く、現在国内でリサイクルされる車載用の使用済み電池の量は「非常に少ない」
・国内で本格的に発生するのは2030年代後半〜2040年代と予想。2030年代初めで年1〜3万トン、2040年代初めで年5〜10万トン
つまり年1万トンの処理能力は、足元の国内の原料(2024年時点で事業者自身が「非常に少ない」と書いた量)を確保しながら、将来の発生増と、2023年に発効した欧州電池規則(金属の回収率とリサイクル材の含有率)も見据えた「プレ商業」(本格的な商業生産の前の段階、というビジョンの語)の設備です。同ビジョンの資金計画は、支援期間中に総額約320億円(国の支援に加えて約250億円の自己負担を予定)で、投資回収は2030年代を想定と書かれています。
足元で国内に出ている原料の確保と並行して、設備を先に置き、主要リサイクル事業者9社との協定で集荷の網を作りにいく。重要鉱物の供給確保を国内のくずから組み立てるとき、時間の順序はこうなるのだと思いました。国内に原料が本格的に出るまでの10年ほどをどう埋めるか。そこが次の論点に見えます。
🔗 住友金属鉱山 ニュースリリース(2026年9月14日): https://www.smm.co.jp/news/release/2026/09/002166.html
🔗 NEDO グリーンイノベーション基金 事業戦略ビジョン「蓄電池リサイクルプロセスの開発と実証」(住友金属鉱山・2024年8月時点): https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-storage-batteries-motors/item-001-2/vision-smm-003.pdf