鉱業×保全優先地域/経済安保×資源循環

2026-09-22

鉱業×保全優先地域/経済安保×資源循環 図版1

オランダのナチュラリス生物多様性センターとライデン大学などの研究者が、世界の鉱山の足跡を「保全優先地域」と重ねた論文を、Nature Communications に受理稿として公開しました(記事ページの公開日は2026年9月21日)。保全優先地域は、国際的に保全の優先度が高いと評価された地域で、保護区とは別の枠です。

数字はこうです。

・現在の鉱山の足跡は少なくとも14.5万km²。うち34%(4.9万km²)が保全優先地域と重なる

・重なる範囲に生息域を持つ種は2,311種。うち1,057種は絶滅危惧(IUCN の CR・EN・VU=絶滅危惧IA類・IB類・II類)

・将来掘れる可能性のある土地では、金属の43%(1,200万km²)、石炭の37%、非金属の29%が保全優先地域と重なる

私が注目したのは、金属の中でも、グリーン技術に必須の重要鉱物が、非金属など他の鉱物と比べて、保全優先地域や絶滅リスクの高い地域との重なりが最も大きいと書かれている点です。著者らは、製品寿命の延長とリサイクル率の引き上げが重要鉱物の需要を減らし、生物多様性の損失を抑えうると述べています。

日本の重要鉱物の政策は、経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定(2026年9月16日時点で11件、国内の製錬設備の新設や増強を含む)のように、経済安全保障の側から動いています。この論文を読むと、同じ循環の施策が、掘る面積を減らすという意味で、自然の側の施策でもあることになります。1つの投資を、供給の安定と自然への圧力の両方で数える。論文は、鉱山の足跡を地図に置くことで影響を個々の鉱山とその事業者にひも付けられるようになり、それがTNFDのような枠組みに沿った判断に要る、とも書いています。

なお、足跡の43%は、燃料・金属・非金属のどれか分からない「不明」に分類されたままです。何を掘っているかのデータ自体が、まだ揃っていません。どの鉱物の需要を減らせば重なりが減るのかを決めるにも、まずここからです。

🔗 論文(オープンアクセス・受理稿): https://lnkd.in/gXsjNsiP
🔗 経産省「重要鉱物の安定供給の確保」(供給確保計画の一覧): https://lnkd.in/g9dNx3Jh