海面上昇×埋立×インフラ輸出/気候適応


国土交通省が2026年9月25日に、シンガポールの持続可能性・環境省(MSE)と、気候科学・気候適応に関する協力覚書(2023年署名)を更新します。あわせて、海面上昇(高潮など)対策をテーマに、官民のハイレベル対話を開きます。日本側の出席予定は、技研製作所、五洋建設、鹿島建設、大林組、応用地質、パシフィックコンサルタンツなど12社です。
背景にあるのが、シンガポールの「ロングアイランド」構想です。都市再開発庁(URA)のページ(2026年9月11日更新)から拾うと、
・東海岸沖に約800haを埋め立て、海面上昇から低地を守る。シンガポールの土地の約30%は海抜5m未満。2100年までに平均海面は最大1.15m上昇しうるとされ、極端な満潮と高潮が重なると海面は最大4〜5mに達しうる
・埋め立て地そのものが海と陸を隔てる連続した堤になり、12本の排水路の水を新しい貯水池に集め、2つの堰とポンプ場で海水を止め、大雨時には雨水を海へ排出する
・貯水池は新しい水源にもなり、約20kmの水辺の公園と、将来の開発用地ができる
・準備工事は2026年末から。計画から実施まで数十年
私が注目したのは、比較された防潮壁案の説明です。東海岸公園に沿って高さ3mまでの防潮壁を作り、12の潮止め水門とポンプ場を置く案も検討されたが、工事が長期にわたって公園の利用を妨げることに加え、12のポンプ場がサッカー場15面分の公園を占めるため「理想的ではない」、とURAは書いています。比較では、工事の長期化と、ポンプ場が占める公園の面積が評価の対象になっている。守り方の検討に、失う土地の使い道が入っている、と読めました。
防護と土地と水を一つの構造物で解く発想は、国土の狭い都市国家ならではですが、海抜の低い地域を持つ日本の沿岸都市にとっても、どの機能を一緒に設計するかの参考になりそうです。URAは環境調査を進め、工学的な手法と自然を活用した手法の組合せを検討するとも書いています。国交省の資料には、シンガポールが2026年を「気候適応元年」と位置づけている、とあります。覚書の更新は、その年に合わせた動きに見えます。
(2枚目の画像は、シンガポール都市再開発庁(URA)が公開している「Long Island」の説明図です。出所:URA Singapore)
🔗 国交省 報道発表(2026年9月18日): https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo07_hh_000822.html
🔗 URA「'Long Island'」: https://www.ura.gov.sg/land-planning/planning-strategies/urban-resilience/long-island/