自然の評価とデータの空白/環境情報化

2026-09-24

自然の評価とデータの空白/環境情報化 図版1
自然の評価とデータの空白/環境情報化 図版2

欧州委員会が2026年9月21日に公表した報告書『European Red List of Moths』に、こうあります。ヨーロッパの蛾3,082種を評価したところ、23.6%にあたる726種が「情報不足(Data Deficient)」でした。大型の蛾23科を中心にした評価です。

情報不足は、危険だという判定ではありません。危険かどうかを判定できなかった、という区分です。絶滅の危険があると推定された種は10.8%ですが、この数字自体、情報不足の種がどちらに転ぶか分からないことを織り込んだ推定値だと書かれています。

気になったのは、その隣に置かれた対照でした。同じ報告書が、直近のヨーロッパのチョウのレッドリストでは情報不足に分類された種が1つもなかった、と書いています。同じ大陸、同じIUCNの基準、同じチョウ目です。

報告書が理由として挙げているのは4つでした。

・見つけにくさ

・記録者の広がり

・分類の難しさ

・モニタリングの伝統の違い

生きものそのものの性質と、記録する側の体制が、並んで置かれています。蛾には蝶ほどの長期で標準化されたモニタリングの蓄積がなく、欧州全域で足並みのそろった調査の仕組みもない、とも書かれていました。

固有種では割合がさらに上がります。ヨーロッパ固有の蛾(現生)は情報不足が35.0%で、全体の23.6%より高い。低懸念は44.4%にとどまります。

報告書は、優先すべき行動の説明で、知識を改善することが決定的な最初の一歩だと書いていました。何をどう守るかを決める前に、まず判定できる状態にする、という順番です。

企業に対して、自然への依存や影響を測って示すことを求める動きも、少しずつ広がっています。そのときに使える数字があるかどうかは、対象の生きものと地域で、記録の蓄積の差としてあらかじめ決まっている部分がありそうです。日本ではどの生きものについて長期の記録が積み上がっているのか、そこを先に見ておく価値がありそうだと思いました。

🔗 欧州委員会の発表: https://environment.ec.europa.eu/news/new-red-list-shows-1-9-moth-species-could-face-extinction-2026-09-21_en

🔗 報告書『European Red List of Moths』: https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/2ff7e251-7f58-11f1-bf5e-01aa75ed71a1/language-en