水×経済安全保障/サプライチェーンの立地

環境情報開示の仕組みを運営するCDPが2026年9月21日に公表した報告書『Water, Trade and Capital』に、こうあります。戦略的な自律を追い求めても、水への物理的な依存はなくならない。変わるのは、その依存がどこにあって、誰が管理しなければならないかのほうだ、という指摘です。
ここで念頭に置かれているのは、地政学の緊張を受けて、生産を国内や近隣に戻したり、調達先を分散したりする動きです。報告書は、6,500社を超える企業が2025年にCDPへ回答した水の開示をもとにしています。企業が見込む水関連の将来の財務影響は3,970億ドルで、そのうち450億ドルはサプライチェーンの上流で生じるものでした。
具体的な場面として、次のようなものが挙げられています。
・イタリアのビエラやコモの繊維産地は、良質な水を背景に育ちました。そこで操業する企業は、水不足を重要な事業リスクとしながら、その産地にしかない生産能力があるので調達先の分散は現実的でない、と開示しています
・メキシコでは水法の改正で、水の配分で生活用水が優先され、当局が必要に応じて水利権の量を制限できる権限が強まりました。米国の通商政策を受けてメキシコへ生産を移す動きが進むなかでの変化です
・重要鉱物について、各国政府は国内での供給確保を求める一方で、その多くは採掘や処理に伴う水の需要や汚染、生態系への影響に十分備えていない、と書かれています
報告書はこれを、グローバル化で外に出していた環境への負荷を、生産を近くに戻すことで自国で抱え直すことになるかもしれない、と表現しています。
経済安全保障の文脈で重要物資の生産を国内に戻す話は、調達先や電力とセットで語られることが多いように思います。そこに、その流域の水をどれだけ当てにしているかを並べておく。自然の制約を、立地や投資の判断の変数として扱うというのは、たぶんこういうことなんだと思いました。
🔗 CDPの発表: https://www.cdp.net/en/press-releases/companies-expect-nearly-400bn-hit-from-water-impacts
🔗 報告書『Water, Trade and Capital』(PDF): https://www.cdp.net/api/file/how-water-is-reshaping-geopolitics-supply-chains-and-financial-risk