化学物質×モビリティ/何を測るか

2026-09-25

化学物質×モビリティ/何を測るか 図版1

タイヤの微粒子が魚に与える影響は、粒子の量だけで見積もると大きく見すぎるかもしれない。愛媛大学、国立環境研究所、産業技術総合研究所などの研究グループが2026年9月18日に発表した研究で、そういう見立てが示されています。

タイヤが路面とこすれてできる微粒子は、日本で1人あたり年間平均1.9kg出ていると推定されています(国連環境計画の2024年の報告による)。研究グループは、タイヤのトレッドを低温で細かく砕いた粒子を混ぜた餌を、コイに最大4週間与えました。

・餌に2.5%以上混ぜた場合、成長には目立った影響がなかった一方で、血液中のヘモグロビン量と赤血球の割合が下がり、貧血の状態になった

・通常の餌に戻すと、1週間後には血液の指標が改善した

・約1年分の日光を紫外線で再現して劣化させた粒子では、貧血は起きなかった

粒子から溶け出す物質を幅広く調べると、タイヤの劣化を防ぐ老化防止剤の6PPDや、製造工程で使う加硫促進剤のDPG、それらの変化物を含む43種類が見つかりました。濃度を見積もった33種類では、多くの添加剤由来の成分が紫外線処理で分解したり失われたりしていました。研究グループは、貧血の主な要因は粒子そのものではなく、タイヤに加えられた化学物質だと強く示唆される、としています。

そのうえで、こうした物質は溶け出しや分解で時間とともに粒子から失われていくので、粒子の存在量だけからリスクを見積もると、実際より大きく評価してしまう可能性がある、と書いています。今後は、実際の環境で生じるタイヤと路面の摩耗粉じんを使った試験で、影響をもたらす物質の特定に取り組むそうです。

タイヤの微粒子は、マイクロプラスチックの話として「どれだけ出ているか」で語られることが多いように思います。この研究は、同じ粒子でも、何を測るかでリスクの見え方が変わることを示しているように読めました。量を減らす対策と、何が溶け出すかを調べる対策は、別のものとして並べて考えておく必要がありそうです。

🔗 愛媛大学・国立環境研究所などの発表: https://www.nies.go.jp/pr/news-and-updates/2026/20260918-2.html

🔗 論文(Environmental Chemistry and Ecotoxicology): https://doi.org/10.1016/j.enceco.2026.08.013