水害×保険データ×行政手続き/環境情報化の「つなぐ」

2026-09-25

水害×保険データ×行政手続き/環境情報化の「つなぐ」 図版1

水害のあと、同じ家を保険会社と自治体が別々に調べる。その二度手間を、保険会社のデータでつなぐ動きが広がっています。東京都は2026年9月18日、あいおいニッセイ同和損害保険と「損害調査結果の提供及び利用に関する協定」を結びました。

水災で建物に被害を受けた住民について、同社の損害調査の結果を都内の区市町村に提供し、区市町村はそのデータを罹災証明書の交付に活用する、という内容です。罹災証明書は、被災者生活再建支援金などの支援を受けるときの判断材料になるもので、市区町村が住家の被害を調べて交付します。

協定で渡すデータの中身は、東京都の発表には書かれていません。参考になるのは、同じ仕組みを先に進めている三井住友海上などの発表で、データ連携の前提として国の基準の見直しを挙げています。内閣府は2024年5月、水害の被害を浸水の深さで判定できる基準をつくりました。現在の運用指針では、木造・プレハブの戸建てを対象にした第1次調査について、浸水の深さで次のように判定するとしています。

・床上1.8m以上の浸水:大規模半壊

・床上1m以上1.8m未満:中規模半壊

・床上0.1m以上1m未満:半壊

・床上0.1m未満:準半壊

ただし、津波や川の氾濫の水流、がれきの衝突などで外壁や建具が壊れている場合は、別の表で判定します。スマートフォンなどの撮影画像から算出した浸水深を使うことも可能、とも書かれています。

物差しが浸水の深さにそろったことが、保険会社の調査の記録を公的な証明に回すときの前提になっている、ということのようです。三井住友海上などが京都府で行った実証では、現地調査なら1件15〜30分かかる判定を、提供データを使う想定で30分に10件行えたそうです。三井住友海上は、水害のときに契約者の同意を得て損害調査の情報を自治体に提供する協定を、2025年8月末時点で265自治体と結んでいます。

同じ家を調べたデータを、民間と行政のどちらか一方で終わらせず、次の手続きにつなぐ。私が「環境情報化」と呼んでいる考え方でいえば、まさに「つなぐ」の部分です。実証に参加した各社は、データ連携で自治体の作業が効率化し、罹災証明の早期発行につながることを確認したとしています。実装と運用はこれからですが、つなぐことで、同じ家を二度調べるという社会的な手間が減り、被災した人が支援にたどり着くまでの時間を縮められる可能性があります。水害が毎年のように起きるなかでは、こうしたデータの受け渡しの設計そのものが、社会的な価値を生むのだと思います。

🔗 東京都の発表: https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/09/2026091811

🔗 内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(PDF): https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r605shishin_all.pdf