自然×財政/補助金の見直し

生物多様性に有害な補助金について、国際目標(昆明・モントリオール生物多様性枠組のターゲット18)は、補助金を含む有害なインセンティブを2025年までに特定し、2030年までに少なくとも年間5,000億ドル、大幅かつ漸進的に削減するという目標を掲げています。ところが日本では、政府の補助金全体を対象にした包括的な検証は行われていない。長崎大学大学院の友居洋暁さんが、文献をレビューして『環境経済・政策研究』に書いた論文(2026年4月早期公開)の指摘です。
この論文で興味を持ったのは、日本では生産を支える補助が一律に有害とは言い切れない、という点でした。中山間地では農業や林業といった活動が減っていて、それによって里山のような二次的な自然(人の手が入ることで保たれてきた自然)の生物多様性が減っている、と論文は書いています。こうした状況では、生産活動への補助が生物多様性の回復にも寄与する可能性もある、としています。
そのうえで論文は、優先して見直す補助金を選ぶための3つの項目(代替可能性・緊急性・影響の最小化)を提案しています。論文の書き方を裏返して言うと、次のどれかに当てはまる補助金は、改廃を検討する必要性が高い、ということになります。
・ほかの政策手法でも、当初の政策目的を達成できる(代替可能性)
・緊急事態への対応措置ではない、または終了期限が設定されておらず、見直しを含む出口戦略も期限付きで明文化されていない(緊急性)
・生物多様性への影響を最小化する措置が、補助制度や関連施策に組み込まれていない(影響の最小化)
補助金には必ず受益者がいるので、見直しは政治的に難しい。それでも論文は、この取り組みは環境政策にとどまらず、財政政策としても大きなインパクトをもたらしうる、と結んでいます。
日本では研究も政策の検討もほとんど進んでいない、と論文自身が書いている領域です。補助金を「有害か有益か」の二つに分けて論じるのは適当でない場合がある、とも書かれていました。国際目標の物差しを、日本の自然の成り立ちに合わせてどう使うか。その手がかりとして読んでおきたい論文だと思いました。
🔗 論文(J-STAGE・早期公開): https://doi.org/10.14927/reeps.rep1902-001