水×環境情報化/観測の空白

2021〜2025年に国際的な災害データベース(EM-DAT)に記録された、水に関わる災害の死者の8割超は、アジアとアフリカでした。一方、世界の水資源の報告書が使えた河川の観測点のうち、この2つの地域は合わせて7.1%でした。
世界気象機関(WMO)が2026年9月17日に公表した「世界の水資源の状況 2025」に、こうあります。
・2021〜2025年に記録された水に関わる極端な現象(洪水や干ばつなど)のうち、アジアとアフリカで半分近く、死者では8割超
・2025年の報告で河川の流量のデータが使えた観測点は3,611か所。ヨーロッパが36.9%、北米・中米・カリブが27.2%で、アフリカとアジアは合わせて7.1%
被害が集中したアジアとアフリカで、河川流量の観測が薄いという構図です。報告書自身も、とくにこれらの地域で観測とデータの共有を改善する必要がある、と書いています。
空白の中身は一様ではありません。マラウイ、ルワンダ、ソマリア、ナイジェリア、マレーシアは地下水位や河川流量のデータを提供しましたが、分析に使える記録の期間が比較の基準より短い、または対象の年を十分にカバーしていないという理由で、分析には入れられませんでした。「測っていない」だけでなく、「データはあるが比べられる長さがない」ことも空白になっています。
もう一つ気になったのは、損失額です。水の災害による経済的な損失は体系的に報告されておらず、とくに保険の普及が限られ、災害の損失を記録する力が弱い国でそうだ、と書かれています。被害の大きさは、保険や記録の仕組みがある場所ほど数字になりやすい、ということでもあると思います。
水のリスクを企業や金融の判断に入れようとすると、まず「その場所のデータがあるか」で止まります。データの少なさそのものが、リスクを小さく見せていないか。私はそこを疑ってみる必要があると思います。海外の拠点や調達先を見るときは、数字そのものより先に、その数字を支える観測がどれだけあるかを確かめておきたいと思います。
🔗 WMOの発表: https://wmo.int/news/media-centre/wmo-recent-water-trends-have-serious-future-implications