資源循環×環境情報化/廃棄物の流れのデータ

2026-09-29

資源循環×環境情報化/廃棄物の流れのデータ 図版1

英国のイングランドとウェールズでは2026年10月1日から、廃棄物を受け入れる許可施設に、受け取る規制対象の廃棄物(家庭・商業・産業の廃棄物の多く)のすべての荷をデジタルで報告することが義務になります。全体を一度に追うのではなく、約1万2,000の受け入れ施設から始めて、運搬業者などには次の段階で広げる。この「受け手から始める」順番に、制度の考え方が出ていると思いました。

英国環境・食料・農村地域省(Defra)が9月25日に更新したガイダンスによると、

・対象は、許可を受けて規制対象の廃棄物を受け入れる施設(家庭ごみのリサイクルセンターには、イングランドとウェールズで条件の違う例外がある)

・荷を受け取った翌日から2営業日以内に、専用のサービスに記録を送る

・中身は、運搬者と受け手、廃棄物の分類コード、再生利用か処分かのコード、有害性や残留性有機汚染物質の情報など

・紙の移動伝票などは、当面そのまま並行して続ける

なぜ受け手からなのか。政策文書に理由が書かれています。対象になりうるのは、廃棄物処理施設の運営者が約1万2,000、登録済みの運搬業者・仲介業者などが約30万。後者は登録していても実際には操業していないことがある。一方、許可を持つ施設は数が正確に分かっている。だから、特定しやすい集団から始めて段階的に広げる、という説明です。

政府が前面に出している目的は、廃棄物犯罪の取り締まりです。環境庁の全国廃棄物犯罪調査(2025年7月)は、廃棄物犯罪として次のようなものを挙げています。

・ごみを不法に捨てる、燃やす

・許可のない違法な処理場を運営する

・廃棄物を違法に海外へ運び出す

・埋立税を逃れるためなどに、廃棄物の中身を偽って申告する

同じ調査では、業界の回答者が、イングランドで出る廃棄物のおよそ2割が違法に扱われていると見積もり、報告書はこれを約3,820万トンと換算しています。損失は業界団体の推計でイングランド経済に年約10億ポンド。正規の業者は相場より安く請け負う違法業者に仕事を奪われ、ごみを捨てられた土地の持ち主は片付けの費用を負う、とも書かれています。

政策文書によると、荷ごとのデータがあれば、道路での検査の場で、その荷が正規の施設に届いたかをすぐ確かめられる。さらに、資源がきちんと再生利用・回収されて経済に戻っているかを確かめるためにも、廃棄物の規制と管理を妨げている「情報の空白」を埋める必要がある、としています。

日本には産業廃棄物の電子マニフェストがあり、2025年度の捕捉率(委託処理量のうち電子マニフェストで把握できた割合)は約66.5%、2030年に75%が目標です。英国(イングランドとウェールズ)は対象となる受け入れ施設に法律で報告を義務づける形、日本は捕捉率の目標を置いて普及を進める形で、進め方は違います。それでも、資源の流れを把握しようとすると、どこで誰にデータを入れてもらうかが設計の要になるのは同じなのだと思います。

循環経済の議論は、再生材の比率や目標値に目が行きがちです。でもその手前にある「誰が、いつ、何を記録するか」を決めることが、実は一番時間のかかる仕事なのかもしれません。

🔗 Defraのガイダンス: https://www.gov.uk/guidance/digital-waste-tracking-check-if-you-need-to-report-the-waste-you-receive

🔗 政策文書: https://www.gov.uk/government/publications/digital-waste-tracking-service