気候適応×強風/平均と極端

温暖化が進んでも、日本の都市の「日ごとの最大風速」の大部分はほとんど変わらないか、むしろ弱まる。強まるのは上位0.01%(日ごとの値で1万日に1日ほど)にあたる極端な値だけで、その増え方は台風のときに見られる。京都大学防災研究所などの研究者が、全国58の主要都市(政令指定都市と中核市。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡、那覇など)の将来の強風を解析した論文です(日本風工学会論文集2026年7月号、J-STAGEで9月24日公開)。
使ったのは、大量の気候予測シミュレーションを集めたデータベース(d4PDF)です。気候モデルは強い風の側で観測を上回る傾向があるため、気象庁の観測データに合わせて補正したうえで、現在の気候と、世界の平均気温が2℃・4℃上がった気候を比べています。使ったデータの水平解像度は60kmで、都市ごとにいちばん近い計算点の値を使っているので、東京も区ごとではなく1つの地点として扱われています(大阪と奈良のように、同じ計算点を使う都市もあります)。環境省の研究費による、全国主要都市の暑熱・強風・雪の「気候変動脆弱性アトラス」づくりの一環です。
結果を整理すると、
・日ごとの最大風速は、分布の大部分で将来もほとんど変わらないか、減る傾向
・増えるのは99.99パーセンタイル(上位0.01%)の極端な値。99.9パーセンタイル以下には、はっきりした増加は見られなかった。この傾向は、詳しく示された近畿以外の地域でも同じように確認された
・台風の影響を受ける日(台風の中心から500km以内に入る日)の割合は、代表として示された10地点のすべてで減る(統計的に有意)。東京は現在1.33%、2℃上昇で1.09%、4℃上昇で0.86%、大阪は1.33%、1.11%、0.85%
・一方、台風のときの強い風は強まり、4℃上昇では解析地点でおおむね1.5〜3m/s増える
・増え方は南の地域ほど大きく、4℃上昇では北日本でも目立つ
台風の日は減るのに、来たときの風は強い。著者らは、個々の台風の強さが増すことで極端な風が増えている可能性を示唆しています。
平均や回数で見ると、変化はほとんど見えません。それでも建物や設備の設計、保険の見積もりで効いてくるのは、めったに起きない一番強い側です。この研究は建物の被害や設計の風速までは推計していませんが、備えの前提を「これまでの平均」に置いていると、見るべき変化を見落としてしまうのかもしれない、と思いました。
🔗 論文(J-STAGE): https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwe/51/3/51_20/_article/-char/ja/