資源循環×GHG算定の国際基準との差/熱回収

2026-10-02

資源循環×GHG算定の国際基準との差/熱回収 図版1

環境経済・政策研究の9月号(9月30日公開)に、山本雅資氏の論考が出ました。排出量取引(GX-ETS)の土台になる温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)で、熱回収を伴う廃棄物の焼却のCO2を控除できることが、リサイクルしやすい設計を促す力を弱めるおそれがある、という指摘です。筆者は、取引が始まっていないため可能性の話だと書いています。

この論考をきっかけに、熱回収が国際的にどう扱われているかを、一次資料で確かめました。先に結論を書くと、EUの廃棄物枠組み指令は、リサイクルの定義にエネルギー回収を含めません。Global Circularity Protocolは、技術サイクルの材料については、物質回収を伴わないエネルギー回収を循環とみなしません。GHGプロトコルは、焼却の排出を、エネルギーを回収しても数え、回避分は差し引きません。日本は、循環型社会形成推進基本法が熱回収を「循環的な利用」に含め、GX-ETSが熱回収を伴う焼却のCO2を一定の条件で控除できるとしています。文書ごとに目的も算定の範囲も違いますが、日本が違う扱いをとるなら、その理由は確かめておきたい点です。

循環の数え方は、次のとおりです。

・EUの廃棄物枠組み指令は、「リサイクル」の定義にエネルギー回収を含めない。優先順位でもリサイクルより下に置く(第3条、第4条)

・2025年11月のCOP30で公表された「Global Circularity Protocol for Business」(WBCSDと、UNEPがホストするOne Planet Network)は、物質回収を伴わないエネルギー回収(焼却など)を、技術サイクルの材料(金属、プラスチックなど)については循環とみなさない(生物由来の材料には条件つきの例外がある)

・日本の循環型社会形成推進基本法は、熱回収を「循環的な利用」に含める。優先順位は再使用、再生利用の次(第2条、第7条)

温室効果ガスの数え方は、次のとおりです。

・GHGプロトコル(企業の算定)は、自社の操業で出た廃棄物を第三者が焼却や廃棄物発電で処理した排出を、スコープ3(カテゴリー5)に入れる。回避された排出量は、インベントリに含めたり差し引いたりせず、別に報告する

・IPCCの2006年ガイドライン(国の算定)は、エネルギー回収を伴う焼却でも、化石起源のCO2は国の排出量に含める

・日本のGX-ETSのガイドライン(2026年4月改訂)は、直接排出の算定で、熱回収を伴う廃棄物の焼却のCO2を控除可能、単純焼却を控除不可とする(表14)。SHK制度は、控除前の基礎排出量も報告させたうえで、調整後排出量から熱回収分を除く。対象は、焼却を主目的に熱回収も行う場合で、熱を使わずに排熱した分は含まない

GX-ETSのガイドラインは、控除の理由を、廃棄物を化石燃料の代替燃料などに用いて、化石燃料起源のCO2排出削減や廃棄物の有効利用に貢献していることを評価するため、と書いています。ただ、今回確認したこのガイドラインと環境省のマニュアルの理由説明には、循環配慮設計への誘因(リサイクルしやすい設計を促す力が弱まるおそれ)の検討は見当たりません。その論点は、冒頭の論考が示しています。

比べているのは、企業単位の算定どうし(GHGプロトコルとGX-ETS・SHK制度)が中心で、IPCCは国単位、循環の数え方は別の物差しです。射程は同じではありません。それでも、これらと違う形をとるなら、その理由がどこまで検討されたのかを、見ていきたいと思います。

🔗 山本雅資氏の論考(環境経済・政策研究 19巻2号): https://www.jstage.jst.go.jp/article/reeps/19/2/19_ron1902-007/_article/-char/ja/

🔗 GX-ETS 算定・モニタリング・報告ガイドライン(GX推進機構): https://gx-league.go.jp/rules/monitoring/