都市の緑×記録/環境情報化

2026-10-04

都市の緑×記録/環境情報化 図版1

都心の再開発でつくられた緑地を、どう育てるつもりで設計したのか。その意図を後からたどれる記録は、どこにあるのか。日本建築学会の論文集10月号に、東京都心部の都市再生特別地区(公共への貢献に応じて建築の規制を緩める制度)を調べた研究が載っていました。

対象は64地区68件の開発で、論文はこれを「68地区」と呼んでいます。著者らは2025年2〜4月に、都と区へ緑化に関する提出書類の開示を請求しました。

・都に出す「みどりの計画書」の情報が得られたのは68地区中11地区。デザインの考え方は明確には書かれておらず、一部に断片的な記述があるだけだった

・区などに出す「緑化計画書」は68地区中28地区。緑地面積の計算は詳しい一方、設計意図は記載する必要がないため、確認できない地区が多かった(虎ノ門・麻布台地区では、設計コンセプトをまとめた資料が添付されていた)

・都と区の回答では、いずれの書類も保存期間は5年で、それより前の資料は存在しない。開示された「みどりの計画書」も、未完了の事業は非開示の部分が多かった

開示請求で得られた行政の書類だけでは、設計意図を十分にたどれなかった、ということです。

計画の段階も見ています。国の優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)の評価項目で「将来の成熟イメージ」にあたるレベル5の記述があった素案は、68地区のうちゼロでした。著者らは、計画が竣工時点の完成度と面積の確保に偏り、育てて管理していく時間軸が書類の上で形になっていない、と読んでいます。

一方で、竣工後の専門誌の記事には、素案になかった将来像や設計の考え方が書かれた例がありました。著者らは雑誌を「非公式な設計意図の保存媒体」と呼んでいます。ただ、記事の記述を0〜5点で評価すると46地区の平均は0.8点と低く、雑誌がすべてを残していたわけではありません。行政の書類でたどりにくい部分を、一部補っていた形です。

緑は、竣工したときが完成ではなく、そこから育っていくものです。何を目指して植えたのかが残っていなければ、10年後に「意図どおりに育っているか」を確かめる手がかりがありません。著者らも、設計意図の継承を「都市の資産価値を維持するための情報の管理」として捉え直すことを提案しています。

自然を測る仕組みが整ってきた一方で、自然について「何を目指したか」を残す仕組みは、まだ手薄なのだと思いました。都市の緑を資産として見るなら、ここも情報の基盤の一部なのかもしれません。

🔗 論文(日本建築学会計画系論文集・J-STAGE): https://doi.org/10.3130/aija.91.2318

🔗 TSUNAG(優良緑地確保計画認定制度): https://tsunag-mlit.com/