水×企業財務/環境情報化


CDPの水セキュリティの評価は、会社の利益率と結びついているのか。農業経済研究の98巻1号に、食品・飲料関連の企業について、気候変動と水の評価と財務の関係を日本と欧州で比べた報告論文が載っていました(東京大学の佐藤・丹野)。
対象は、CDPに回答していて複数年のデータがそろう日本の18社と欧州の17社です。年ごとの件数にすると、日本はのべ86件で、スコアの内訳はこうでした。
・気候変動:A 23件/A− 16件/B 27件/B− 3件/C 6件/D 11件
・水:A 21件/A− 19件/B 13件/B− 8件/C 6件/D 19件
分析は、「スコアが上がるほど利益率も上がるか」を一本の線で見たものではありません。いちばん低いD評価だった場合を基準に、A、A−、B、B−、Cそれぞれの評価だった場合の翌年のROA・ROE・売上高利益率が高いかを、評価ごとに見ています(会社×年のデータで)。時間を通じて変わらない会社ごとの違いと、各年に共通する変化は調整しています。
結果はこうでした。
・日本の気候変動:A−だけがDより高かった。Aは差が確認できなかった
・日本の水:どの評価も、Dとの差が確認できなかった
・欧州:気候も水も、いくつかの評価でDより高かった。ただ水ではA−とCで差が出てAでは出ないなど、評価の高い順にはなっていない
なので、この研究から「評価が高いほど儲かる」とも「水は儲からない」とも言えません。論文も、見ているのは因果ではなく相関であること、環境評価や経営条件のよい会社に偏っていることを断っています。そのうえで、日本の食品飲料の水の評価は、この方法で見た限り、財務との関係が一つも出なかった。ここははっきりしています。
著者らは理由の可能性として、消費者の環境への関心の低さを挙げています。水の評価は気候変動より開示する企業が少なく、注目もやや低いので、消費者や投資家の評価に結びつかなかったのではないか、と。
私はもう一つの見方を足したくなります。食品や飲料の会社にとって、水は原料であり、工場を動かす条件そのものです。財務と結びついていないのは、水のリスクが小さいからではなく、水の情報が、まだお金の評価の回路に乗っていないからかもしれません。
それと、この結果は、非財務の評価と財務の関係を確かめる難しさも見せていると思います。18社では、評価ごとに比べると1つの評価あたりの件数は少なく、評価の順に結果が並ばないこともある。会社の数や年数を増やして、同じ関係が再現するかを確かめる必要がありそうです。
🔗 論文(農業経済研究・J-STAGE): https://doi.org/10.11472/nokei.98.440