気候適応×林業の経営/木材価格

森の気候適応の判断は、木材価格の見通しを聞くと変わるのか。欧州10か所の森林の「リビングラボ」(研究者と現場が協働して森の管理を試す場)で働く林業の専門家、約200人に聞いた調査の論文が、9月28日に Communications Earth & Environment に出ました。
調査は2段階です。まず、その土地の2100年までの気候の見通し(年平均気温・年降水量・夏に乾いた日が続く最長日数の変化)を示して、どんな管理を選ぶかを聞く。次に、木材価格が上がるという見通しを示して、同じ管理の項目を聞く。
気候の見通しを示したときは、
・樹種の多様性を高める、針葉樹と広葉樹を混ぜる、天然更新(自然に生えてくる若木を育てる)を助ける、が優先された
・針葉樹の割合は「減らす」45.5%、「維持する」40.1%で、合意はなかった
木材価格が上がる見通しを示すと、同じ人の回答は次のように動きました。
・針葉樹(191人):68.1%は判断を変えず、27.2%は維持や増やす方へ、4.7%は減らす方へ
・広葉樹(189人):75.1%は判断を変えず、19.6%は増やすのをやめて現状維持の方へ、5.3%は増やす方へ
リスクの見立てはほぼ共通していて、干ばつを高い・非常に高いリスクとした人は91.3%、病害虫は89.9%でした。それでも、市場の見通しが入ると、2割から3割の人の選択が動きます。著者は、生態系のレジリエンスと社会経済の優先順位のあいだの緊張に、森林政策が向き合う必要がある、と書いています。
気候への適応は、何が望ましいかが分かっていても、それを選び続けられるかは別の問題なのだと思いました。何十年も先に効く森の判断が、木材価格という目の前の経営の変数で動く。日本の人工林でも、樹種の転換や混交林にしていく議論で、同じことは起きうると思います。適応策を「何を選ぶか」だけでなく、価格が動いても選び続けられる仕組みとセットで考える必要がありそうです。
なお、選ばれた専門家への調査で欧州全体の代表ではないこと、多くの人は判断を変えていないことは、著者自身が断っています。
🔗 論文(Communications Earth & Environment 7:792・2026年9月28日): https://doi.org/10.1038/s43247-026-04087-6