水リスク×データの出どころ/環境情報化

2026-10-06

水リスク×データの出どころ/環境情報化 図版1
水リスク×データの出どころ/環境情報化 図版2

事業所やサプライヤーが使っている水は、その場所の流域から来ているとは限りません。流域をまたいで水を運ぶ導水があるからです。世界の主要な導水プロジェクト435件を、取水点・送水の経路・プロジェクトに関連する範囲(influence region)の地図にそろえたデータセットが、10月5日に Scientific Data に出ました(中国科学院 武漢植物園などのチーム)。

地域別では、アジア187件、北米112件、アフリカ58件、欧州43件、南米20件、オセアニア15件。日本の6件も入っています。

論文がまず書いているのは、これまで導水の記録を比べられなかった理由です。

・国や地域ごとの台帳はあるが、数える単位、流域の定義、何を含めるかがそろっていない
・「流域をまたぐ導水」かどうかは、流域をどの細かさで区切るかで変わるので、研究によって件数が違う
・多くは文章や計画図の中にあって、地図のデータになっていない

点として公開しているのは取水点だけで、送水の経路の線と関連する範囲の面も公開されています。関連する範囲は、影響の大きさを測るためではなく、絞り込みや仮説づくりに使うもの、と著者は注意しています。

水リスクを分析するときは、まず事業所が立地している流域を見ることが多いと思います。ただ、受け取る側で水が足りているように見えても、その水は別の流域から長い距離を運ばれてきていることがある。そうであれば、送り出す側の流域の水の状態も、受け取る側のリスクの一部として見る必要があるはずです。

環境情報化を「整える・つなぐ・活かす」の3つで考えると、この論文がやっているのは「整える」、つまり定義をそろえて比べられる形にするところです。その先に、

・つなぐ:自社の事業所やサプライヤーの所在地と、その水の出どころを結びつける
・活かす:水の出どころまで含めて、自社とサプライチェーンのレジリエンスを分析し、どれくらいの財務リスクがありうるか、どのエリアでリスクを下げる機会があるかを判断する

という段階があるのだと思います。少なくとも、事業所やサプライヤーの水リスクを分析しようとした人が「その水はどこから来るのか」を追えるようにデータがつながっていること。水については、そこが次の論点になりそうです。

🔗 論文(Scientific Data・2026年10月5日・早期公開版): https://doi.org/10.1038/s41597-026-08390-x