自然のデータ基盤×環境情報化

2026-10-06

自然のデータ基盤×環境情報化 図版1

50年続いてきた国の自然の調査を、施策に使える形でまとめ直したとき、何が壁になったのか。環境省の生物多様性センターが10月5日に公表した「自然環境保全基礎調査」(通称「緑の国勢調査」)の総合解析の報告書は、課題として「データの取りっぱなし」と「経年比較の難しさ」を自ら挙げています。

基礎調査は、自然環境保全法に基づいて1973年度から続く全国の調査です。50年目を機に、2023〜2025年度にかけて、これまでの成果にほかの自然や社会のデータも重ねて解析しました。

本編の終わりにある「総合解析を通じて明らかになった基礎調査等の課題」には、たとえばこう書かれています。

・データの取りっぱなしにならないよう、アウトプットを意識して調査する。そのために、収集に加えて定期的に解析する
・方法、対象種、地域などが異なるために、経年比較が困難な場合が多い
・調査項目やデータ構造が統一されておらず、整理に労力がかかる
・調査成果の利用実績を追えるようにしておく

重ねると何が分かるかの例も載っています。2023年度までに認定された自然共生サイト(民間の取り組みなどで生物多様性が守られている区域を、環境省が認定する制度)184件を、環境省が選んだ重要湿地や重要里地里山などの地図と重ねると、何らかの重要地域と重なるのは41%(76件)でした。重要地域の地図は広い範囲を含むので、重なりがそのまま保全の対象を含むとは限らない、という注記つきです。

自然のデータは、「ある」ことと「使える」ことのあいだに、もう一つ仕事があると思います。

・何に使うかを決めてから取る
・方法を変えるなら、前の回と比べられる形で変える
・どこで使われたかを記録しておく

50年分のデータを持つ国の調査でも、これが課題として残っています。

企業が自然共生サイトのモニタリングや、自然関連の開示のためにデータを集め始めているいま、同じことはどこでも起こりうると思います。5年後、10年後の判断に使える形で残せるか。環境情報化の手間は、集めることより、比べられる形で残すことのほうにあるのだと思いました。

詳細な解析データは、2026年度中に公開される予定です。

🔗 環境省 報道発表(2026年10月5日): https://www.env.go.jp/press/press_05632.html

🔗 総合解析の概要(生物多様性センター): https://www.biodic.go.jp/kiso/mp/Highlights_Comprehensive_analysis_report.pdf