NbS×災害復旧の予算/自然公園

2026-10-06

NbS×災害復旧の予算/自然公園 図版1

自然公園の中で、災害で崩れた斜面を緑に戻すとき、生物多様性に配慮した工法にすると、いくら上乗せになるのか。日本緑化工学会誌に載った技術報告が、自然公園の中で使われる緑化の工法と、通常の市場単価の工法の工事単価を比べています。

背景にあるのは、予算が決まる順番です。道路や河川などの災害復旧では、被災から約2か月以内を目安に、国が現地を確かめて国庫負担の額を決めます(災害査定)。通常の法面(工事で整えた斜面)の緑化は「数量×市場単価」で費用を見積もれるので、この短い期間でも予算が組める。一方で、生物多様性に配慮した次のような工法には、市場単価方式の標準の単価がありません。

・地域性の種苗を使う
・周りから植物が入ってくるのを促す
・現地の表土を使う

地域性の種苗を確保するには3年以上かかることも想定され、予算が決まったあとで工法を変えるのは容易ではない、と報告は書いています。

2016年の熊本地震の斜面崩壊地には、阿蘇くじゅう国立公園の区域が多く含まれていました。報告は熊本県の単価(労務費などは令和7年度の公表単価、比べる相手の市場単価は2026年4月のもの)で、配慮した工法と、それに相当する通常の工法の組み合わせ82通りを比べています。

・単価の比は平均1.52倍、中央値1.36倍
・82通りのうち、1.6倍までに73.2%、1.8倍までに78.0%が入る
・もとの単価が安い工法ほど比が大きい(植生シート相当で2.69倍、厚さ7cmの吹き付け相当で1.16倍)

著者は、最低でも1.5倍、できれば1.8倍の予算を見込んでおくと、設計の自由度が上がるとまとめています。

自然への配慮が、「やるか、やらないか」ではなく、「いつ、いくら見込んでおくか」で決まる場面があるのだと思いました。上乗せの目安を先に持っておけば、2か月で決まる予算の中に、はじめから入れられる。環境情報化というと自然のデータを思い浮かべますが、自然に配慮するコストを、判断のタイミングに間に合う形にしておくことも、その一つなのだと思います。

🔗 技術報告(日本緑化工学会誌 52(1)・J-STAGE): https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/52/1/52_115/_article/-char/ja/