自然への依存×生物多様性の測り方/自然関連開示

自然に頼っている事業のリスクを測るとき、生物多様性の「何」を見ればいいのか。英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどのチームが10月6日に Nature Ecology & Evolution に出した論文を読むと、その答えは、頼っている自然の働きによって変わるようです。
論文は、生物多様性と生態系サービス(水をきれいにする、作物の花粉を運ぶ、洪水を和らげる、といった自然の働き)の関係を調べた423件の研究を集め、生物多様性が減ったときに働きがどう変わるかを、分類ごとに並べ直しました。ここでいう生物多様性は、種の数だけでなく、花粉を運ぶ、落ち葉を分解するといった働きのまとまり(機能群)や、分類のグループ(分類群)の数で測ったものも含みます。
分かれ方はこうです。
・水質の調節や送粉などは、多くが、生物多様性が増えるほど働きもまっすぐ増える関係(直線の関係)にある。生物多様性が足し算のように効いている、と著者は読んでいる
・洪水や極端な現象を和らげる働きは、効果の大きさで見ると、生物多様性への反応が全体として弱い。著者の例では、砂丘を固める1〜2種の低木のような、土台になる少数の種に支えられている
・海の炭素の吸収は、生物多様性への反応がいちばん強かった。生物多様性が減ると、吸収も落ちやすいということです(ただしデータは7件と少ない)
著者は、多くの働きで「種が減っても他の種が代わりを務める」という見方は、これまで大きく見積もられすぎていたかもしれない、と書いています。一方で、土台になる種そのものも、まわりの生き物の群集に支えられて残っている、とも断っています。
私はここに、企業が自然への依存を評価するときの物差しの話が含まれていると思いました。水質や送粉に頼る事業なら、生物多様性の減り方がそのまま効いてくる。災害の緩和に頼る拠点なら、生物多様性の全体の量より、その場所を支えている少数の種が残っているかを見るほうが近い。同じ「生物多様性の指標」でも、頼っている働きによって、追うべき数字が違ってくるのだと思います。
なお、集めた研究は陸上と先進国に偏っていて、淡水や海の研究は少ない、と著者自身が書いています。
10月13日には、Nature Positive Initiative(NPI)が、自然の状態を測る指標(State of Nature Metrics)を発表します。この論文で横軸に置かれている生物多様性を、国際的にそろった基準で測れるようになれば、こうした研究から分かることの広がりや深さも増していくはずです。社会や経済と自然資本の関係が、もっと見えるようになっていくといいなと思っています。
🔗 論文(Nature Ecology & Evolution・2026年10月6日): https://doi.org/10.1038/s41559-026-03200-4
🔗 Nature Positive Initiative「State of Nature Metrics」: https://www.naturepositive.org/metrics/