脱炭素×水×土地/資源制約

脱炭素を進めると、水の使い方はどう変わるのか。2010年から記録的な干ばつが続くチリを対象に、英オックスフォード大学などのチームが10月7日に Environmental Research Letters に出した論文は、気候対策の政策をとらない基準のシナリオ(REF)と、2050年のカーボンニュートラルに向けた8通りの道筋を比べています。
チリは、2050年に残る排出を6,500万トン(CO2換算)までに抑え、森林などの吸収で相殺する目標を法律で定めています。石炭火力は2040年までにすべて止める計画です。論文は、発電を再エネ中心で進めるか、CO2の回収・貯留(CCS)付きの火力を残すかに、土地で吸収を増やす対策の強さを3段階で組み合わせました。土地の対策は、陸の炭素に価格をつけて、草地や森林などに炭素をためる使い方を有利にする形で表しています。
結果を並べると、
・発電で使う水は、再エネ中心なら基準のシナリオに比べて2050年に約72%減、CCS付きの火力を残すと58%減
・ただ、国全体の取水でいちばん大きいのは農業のかんがいで、どの道筋でもそれは変わらない
・国全体の取水を大きく動かしたのは、吸収源を増やすための土地の配分だった。対策が強いと基準のシナリオより8〜10%減るが、主に農地と農業生産が減るためで、食料とのトレードオフになる
著者は、国全体の水の需要は、再エネかCCSかの選択より、土地の配分の変化に左右される、と書いています。
脱炭素の計画を水の側から見直すと、発電の選び方より土地の配分のほうが効く、という別の順番が見えてくるのだと思いました。発電の選び方は、電力部門の水を大きく減らす。一方で、吸収源に頼る部分は、水と食料と土地を同時に動かす。しかもその吸収源は、山火事や気候の変化に弱い、と著者は書いています。水が足りない地域で事業をする企業にとっても、排出削減の計画が地域の水と農業にどう跳ね返るかは、計画の段階で見ておく変数なのだと思います。
なお、モデルでは流域の水の供給量を過去の値に固定していて、乾燥が進むことは織り込んでいません。数字は予測ではなく、道筋どうしを比べるためのものだと著者は断っています。植林そのものを否定しているわけでもありません。
🔗 論文(Environmental Research Letters・2026年10月7日): https://doi.org/10.1088/1748-9326/aeac70
🔗 モデルとデータ(GitHub): https://github.com/josephinehenze/GCAM-chile-2050-water-energy-land-nexus