資源の採掘×LCAデータ

ノートパソコン1台をつくるのに、地球からどれだけの資源を掘り出しているのか。こうした「製品のマテリアルフットプリント」は、製品のライフサイクル評価(LCA)に広く使われるデータベース ecoinvent をもとに計算されることが多い指標です。ドイツのヴッパータール研究所のチームが10月5日に Journal of Industrial Ecology に出した論文は、そのデータベースがこの計算にどこまで使えるかを確かめています。
マテリアルフットプリントには2つの段があります。経済的に使われる採掘の量(RMI。鉱石なら、目的の金属だけでなく一緒に掘り出される脈石も含む)と、その上を覆う表土のように、採掘のために掘って動かすだけで使わない分まで含めた量(TMR)です。
結果は、
・経済的に使われる採掘の量(RMI)は、ecoinvent の記録から直接計算できる。ただし金属は、従来の方法(世界の平均的な係数を当てる方法)との差が大きく、1桁(10倍)開くものもある。データが特定の鉱山を表していたり(スズはペルーの地下鉱山)、金のように場所で量が大きく違ったりするため
・使わずに動かす分を含めた量(TMR)は、表土の記録が少なく、いまの ecoinvent では計算に向かない。脈石を記録すべき工程のうち99%に記録が入るようになった一方、表土の記録は版を重ねても増えていない
ノートパソコンで比べると、2つの方法の差は RMI で27%、TMR では53%(823kgと1,775kg)でした。1kWhの電気では、TMR に5倍の差が出ています。
著者は結論で、製品のマテリアルフットプリントを測ることは「方法の問題ではなく、データを集める問題」だと書き、データベースの提供者に、資源の採掘を、エネルギーやCO2と同じ丁寧さで記録してほしい、と求めています。
CO2は、算定のルールもデータもかなりそろってきました。一方で、資源の採掘、とくに掘って動かすだけの側の量は、データベースの中でまだ薄い。資源循環や重要鉱物の議論で「どれだけ掘らずに済んだか」を言うには、まず掘った量が記録されている必要があります。資源の制約を経営の判断に入れるうえで、どの情報がまだ空白なのかを知っておくことも、環境情報化の一部なのだと思います。
🔗 論文(Journal of Industrial Ecology・2026年10月5日): https://doi.org/10.1007/s44498-026-00183-0