地下水の水質×長期の監視/環境情報化

地下水の汚れを減らす計画を20年続けると、水質はどこまで戻るのか。熊本県荒尾地域の地下水の硝酸性窒素(肥料やふん尿などに由来する窒素の汚れ)対策、約30年を振り返った報告が、『陸水学雑誌』87巻2号(日本陸水学会)に載りました。報告には、水質の数字と並んで、20年続けて測れた井戸の数も記録されています。
熊本県は水道水源の8割以上を地下水に頼っています。荒尾市では、1989〜1994年度に県と市が調べた148の井戸のうち23で、硝酸性窒素がいまの環境基準の値(10mg/L)を超えていました。汚染は、果樹園への施肥と畜産との関連が高いと分析されました。2003年に、行政の計画としては全国で初めての硝酸性窒素の削減計画がつくられ、施肥・家畜のふん尿・生活排水の3つを発生源対策の対象にしています。県と市、研究機関に加えて、JAの梨部会やみかん部会、酪農組合も入った会議で決めた計画です。
計画は2022年度で終わりました(報告の比較表の最新の実績は主に2020年度)。報告による評価は、
・肥料・ふん尿・生活排水の対策の指標は、一部に未達はあるものの、どれも計画をつくった当時より進んだ
・一方で、水質の最終目標(指標にした井戸のすべてで10mg/L以下、さらに5mg/L以下に)は、計画の最終年度の2022年度に達成できなかった
・20年続けて測れた19の井戸の平均濃度は、2001年度に約8mg/Lあり、20年かけて下がった分は1.4mg/Lほど(報告の近似の直線による)。直近10年はほぼ横ばいで、6mg/L台にとどまっている
・10mg/Lを超える井戸は4か所のまま。濃度が下がった井戸と上がった井戸が混ざっていた
著者は、対策の進みと水質のずれを、効果が出るまでに長い時間がかかることの表れと読み、2023年からの第二期計画(2042年まで)につないでいます。
もう一つ、報告にはこう書かれています。計画で選んだ35の指標井戸(水質の変化を追うために選んだ井戸)のうち、20年以上続けて監視できたのは19にとどまった。だから、長く監視し続けられる井戸を選ぶことが重要だ、と。
自然の回復を目指す計画は、企業の自然関連の目標も含めて、「対策をどれだけやったか」と「自然の状態がどう変わったか」の2つで進みを見ることになります。状態のほうは遅れて動くので、同じ場所を何十年も測り続けられるかどうかが、目標を評価できるかどうかを決める。荒尾の20年は、測る仕組みは計画の付属物ではなく、最初から計画の一部として設計しておく必要があることを教えてくれます。
🔗 報告(『陸水学雑誌』87巻2号・J-STAGE): https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/87/2/87_167/_article/-char/ja/