森林破壊×サプライチェーンの位置データ/環境情報化

EUの森林破壊防止規則(EUDR)は、2026年12月30日から大・中規模の事業者に適用されます。コーヒーやカカオ、パーム油などをEUで売るには、2020年末より後に森を切り開いた土地で作られていないことを、生産した区画の位置までたどって示す必要があります。では、生産国の畑は、この条件をどこまで満たしているのか。そして、それを示す情報はどこまで整っているのか。
シンガポール国立大学などのチームが10月8日に Environmental Research Letters に出した論文(受理稿)は、世界3位のコーヒー生産国インドネシアについて、衛星データで2016〜2024年のコーヒー畑の地図を毎年つくり、これを推計しています。
結果は、
・2024年のコーヒー畑(地図上で約155万ha)のうち、87.9%が「森林破壊なし」に分類された。8.3%は、地図上で2020年は森、2024年はコーヒー畑に分類された場所。3.7%は、同じ2020年について、論文が作ったコーヒー畑の地図ではコーヒー畑、EUDRの判定を支えるためにつくられた森林地図では森とされ、判定が食い違う区分
・別の森林地図を使うと、「森林破壊なし」は82.7%。どの地図を使うかで数字は動く
・森から転換されたコーヒー畑は、主な産地に限らず、小さく散らばっていた
もう一つ、論文が挙げている数字があります。インドネシアには、農家が畑の位置を登録する国の制度(STDB)があり、登録した区画を森林の地図と重ねられるようにしています。ところが、この国の制度に限ると、2025年時点で登録の手続きに入った農家は30,917人。国の統計にあるコーヒー農家185万人の約2%です。全国に広げる費用は3,800万ドルと見積もられています。企業や非営利組織が独自に追跡の仕組みをつくる動きもあり、論文は、そうした仕組みのデータも地域や国の単位で突き合わせる必要がある、としています。
著者も断っているとおり、87.9%は国全体の畑の面積の割合で、EUに向かうコーヒーのうち条件を満たす割合ではありません。それを知るには、どの畑のコーヒーがどの荷に入ったかをつなぐデータが要ります。
ここから考えたのは、この規則では、森の状態に加えて、畑の位置の情報をどう届けるかが問われるのかもしれない、ということです。森林破壊のない畑が多くても、それを示す位置のデータが無ければ、小さな農家ほど市場から外れかねない。木陰で育てるコーヒーは衛星から森と見分けにくい、という限界も論文は書いています。自然に関する規制は、生産の現場に「測って、示す」仕組みが届いて初めて回るのだと思います。
🔗 論文(Environmental Research Letters・2026年10月8日): https://doi.org/10.1088/1748-9326/aeb1e2
🔗 EUDR の適用日(欧州委員会): https://environment.ec.europa.eu/topics/forests/deforestation/regulation-deforestation-free-products_en