再エネ×野生生物/建てる前の情報

2026-10-12

再エネ×野生生物/建てる前の情報 図版1

風力発電の風車に鳥がぶつかる問題は、これまで主に、風車の周りで死骸を探して数えるやり方で調べられてきました。ただ、死骸の数には、その種の飛び方に由来する危うさ(感受性)と、風車のある場所にどれだけいるか(風車への暴露)の両方が混ざっていて、分けられません。英国生態学会の Ecological Solutions and Evidence に10月1日に出た論文は、このうち感受性の側を、鳥の飛び方から測っています。

著者らは、欧州6か国15地域で繁殖する猛禽類6種・280羽にGPSの発信機をつけ、1日に飛ぶ時間、風車の羽根が回る高さ(地上32〜200m)を飛ぶ割合、巣からの距離を調べました。

結果は、

・1日に飛ぶ時間は、種と性別で0.5時間から7.4時間まで違った
・羽根の高さを飛ぶ割合は、12.4%(ヒメハイイロチュウヒ)から56.4%(アカトビ)まで
・この2つから推定した「1年に羽根の高さにいる時間」(衝突の数ではない)は、アカトビがほかの種の1.7〜7.4倍(雌)、3.5〜6.0倍(雄)
・どの種も、巣から離れるほど羽根の高さにいる時間は減る。ただし減り方は種ごとに違う

飛ぶ時間と高さの割合は、地域の差より種の差のほうがずっと大きかった。だから、風車を建てる計画のたびに鳥にGPSをつけなくても、種ごとの結果を地域をまたいで使える、と著者は書いています。巣からの距離の結果は、事業者などが風車の配置案を比べられる公開のオンラインツールにもなっているそうです。

ここから考えたのは、種の感受性と風車への暴露を分けて測ることの意味です。死骸の数は、すでに風車が建った場所の結果でしかありません。これから建てる場所を選ぶには、まだ風車の無い場所で、どの種が飛び方の上でどれくらい危ういかを先に知っておく必要がある。論文が測ったのは感受性の一部(避ける行動や個体数への影響は含まない)ですが、どの種の巣がどこにあるかという情報が整っていれば、風車の配置案ごとのリスクを、建てる前に比べられる。そう考えると、鳥の分布や巣の調査は、風力の事業者にとって、自然生態系の調査やアセスメントに投資する理由にもなりうるのだと思います。再エネを広げることと自然を守ることを両立させるうえで、建てる前に使える情報をどれだけ持っているかが効いてくるのかもしれません。

🔗 論文(Ecological Solutions and Evidence・2026年10月1日): https://doi.org/10.1002/2688-8319.70315