農業の資源循環×輸入依存/レジリエンス

2026-10-12

農業の資源循環×輸入依存/レジリエンス 図版1

農業の資源循環(作物の残さや家畜のふん尿、食品の副産物を、飼料やエネルギーに回すこと)は、脱炭素にどれくらい効くのか。アイルランドのゴールウェイ大学などのチームが10月5日に Communications Earth & Environment に出した論文は、2050年のアイルランドの農業と土地利用を12のシナリオでモデル化し、12の指標で比べています。答えは、脱炭素への効き目は小さいが、輸入に頼らずに持ちこたえる力には大きく効く、というものでした。

アイルランドは乳製品や牛肉を輸出する一方で、家畜の飼料を年に420万トン(約10億ユーロ)輸入し、肥料にも年に5億6,000万ユーロ(2018〜2022年)を使っています。論文は2つの循環のやり方を、それぞれ試しています。結果をやり方ごとに並べると、

・エネルギー重視(副産物やふん尿をメタン発酵でバイオガスにして、エネルギーと肥料〔消化液〕に回す):国内の農業の排出は、道筋によって8%減〜2%増。消化液で国内の化学肥料(窒素)の11〜16%を置き換えられる。ただ、飼料に回っていた副産物をエネルギーに回すぶん輸入飼料が増え、海外での排出が最大16%増える場合がある
・飼料重視(副産物を家畜の飼料に回し、輸入飼料を減らす):海外での土地の需要が18〜19%減り(貿易のある道筋)、海外での排出も減る。一方で、モデルは慎重な仮定として、繊維の多い副産物を飼料にすると牛などの消化管から出るメタンが増えるとしており、国内の農業の排出は最大8%増える
・どちらのやり方でも、輸出の減少と、肥料・エネルギー・飼料の輸入価格の上昇が重なる想定で、貿易収支の黒字を保った(循環が最小のシナリオは赤字に。現状維持の道筋を除く)

温室効果ガスへの効き目が小さい理由は、2つあるように読めます。1つは、農業の排出を大きく左右するのは家畜の頭数で、循環はその頭数を変えないこと。ネットゼロの道筋では、頭数の削減や排出を減らす技術などで国内の農業の排出が29〜62%減るのに比べると、循環の上乗せは小さい。もう1つは、国内で減った分が海外で増える、あるいはその逆、というずれがあることです。国内と海外を合わせると、どちらのやり方でも削減は2〜4%でした(現状維持以外の道筋)。

著者の結論は、循環は食と土地のしくみの大きな転換の代わりにはならないが、レジリエンスをかなり強める、というものです。

日本の飼料自給率は24%(令和7年度)です。資源循環を「どれだけ温室効果ガスが減るか」だけで評価すると、効き目は小さく見えるかもしれない。でも、輸入が細ったときや価格が跳ねたときに持ちこたえる力として測ると、別の価値が見えてくる。何を物差しにするかで、同じ取り組みの評価が変わるのだと思います。

🔗 論文(Communications Earth & Environment・2026年10月5日): https://doi.org/10.1038/s43247-026-04052-3
🔗 飼料自給率(農林水産省): https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html