自然のデータ基盤×環境情報化

全国の淡水魚がどこにいるのか。環境省の生物多様性センターが10月5日に公表した報告書は、その地図を約25年ぶりに描き直しました。自然環境保全基礎調査として淡水魚の全国的な分布を調べるのは、第5回(1997〜1998年)以来です。情報源ごとに数えると、地図の区画に最も多くかかわっていたのは、新しい調査より、既存の調査や専門家から集めた情報でした。
調べ方は、以前とは変わっています。報告書は、これまでの全種調査には「種同定等の精度確保の難しさ」「予算・労力面の負担の大きさ」「結果のアウトカムへのつながりの弱さ」という課題があったとして、対象を115種(里地里山などの二次的自然に暮らす魚や特定外来生物など)に絞りました。そのうえで、
・国の機関などから提供された調査データと、学術誌や地方誌などの文献を集める
・専門家へのアンケート(協力できると答えた81人に送り、76人から回答)とヒアリングで分布の情報を得る
・それでも情報の無い「情報空白地域」で、川の水を汲んで環境DNA(水の中に残る生きもののDNAの断片)を調べ、そこにいる魚を確かめる
という順に地図を埋めています。2024年には、過去も現在も記録は無いが、集めたデータから魚が多くいそうだとモデルで予測された地域も、環境DNAの調査地に選んでいます。
情報源ごとに重複込みで数えた延べ5,053区画(1区画は約10km四方)のうち、最も多くを占めたのは専門家からの情報(アンケートとヒアリング)で37.5%。次が「田んぼの生き物調査」の20.1%、国交省の「河川水辺の国勢調査」が河川とダム湖をあわせて18.0%でした。今回の環境DNA調査がかかわった延べ区画は3.9%です。
報告書は今後の課題として、同じような調査をするなら、データを選別する方針を先に決めてから始めることを挙げています。集めたデータは、希少種の位置を伏せたうえでオープンデータとして公開する予定だそうです。
この地図を支えた国交省の河川水辺の国勢調査でも、2026年度から、魚類の環境DNA調査が基本調査に加わりました(従来の、魚を捕って調べる調査は「魚類採捕調査」と位置づけ直され、河川では10年に1回に)。これからは、環境DNAで集まるデータそのものも増えていきそうです。
ここから考えたのは、自然のデータは、新しく測ることと同じくらい、すでにある記録をどう集めるかの比重が大きい、ということです。環境DNAという新しい技術は、空白を選んで埋める役でした。企業や地域が自然のデータを整えるときも、まず手元と周りにある記録を集め、足りない場所を選んで測る。その順番の設計が、使えるデータになるかどうかを左右するのかもしれません。
🔗 報道発表(環境省・2026年10月5日): https://www.env.go.jp/press/press_05633.html
🔗 河川水辺の国勢調査 全体調査計画策定の手引き(国交省・2025年9月改定): https://www.nilim.go.jp/lab/fbg/ksnkankyo/mizukokuweb_R/system/DownLoad/R8_zentai.pdf