川の自然再生×測り方/ダム・堰の撤去後の回復は撤去前のデータで見え方が変わる

川をせき止めるダムや堰を取り除いて、川のつながりを取り戻す。こうした撤去は世界で増えていて、EUでは自然再生規則に関連して、少なくとも2万5,000kmの川を自由に流れる状態に戻すことが掲げられています。撤去したあと、川の生き物はどう変わるのか。英国生態学会の Journal of Applied Ecology に10月1日に出た論文は、撤去後の生態系の反応を調べた29の研究(23の河川・803の観測値)を統合しています。
見えてきたのは、撤去の成果は、撤去する前から測っていたかどうかで見え方が変わる、ということでした。
・撤去の前後を測った調査に比べて、撤去後だけを影響のない区間(対照)と比べた調査は、変化の大きさを小さく見積もる傾向があった。両方の方法で計算できた457組では、増えたか減ったかの向きが一致したのは66.7%で、約3分の1は向きが逆だった
・もとの貯水域(ダムや堰の上流側)では、撤去前のデータがある観測値と無い観測値がほぼ半々だった
・撤去した区間が対照に近づくまでの予測は、もとの貯水域で約12か月、下流で約60か月。ただし川によるばらつきは大きい
・反応は場所と生き物で向きが違う。撤去前後の変化で見ると、魚の種数は下流で減り、水底の虫などの種数はもとの貯水域で増えた
・生態系の働きを直接測った研究は少なく、統合できたのは落ち葉の分解だけだった
著者らは、撤去後1年で調査を終えず、できれば5年以上、とくに下流を測ること、そして撤去前から測る設計を優先することを勧めています。
ここから考えたのは、自然を再生する取り組みで「回復した」と言えるかどうかは、工事の前に測り始めたかどうかに左右される、ということです。後から効果を確かめようとしても、比べる「前」のデータが無ければ、回復を小さく見積もったり、向きを読み違えたりしかねない。企業や自治体が自然再生に取り組むときも、施工前の状態を測る費用を最初の計画と予算に入れておくことが、成果を説明するための条件になるのかもしれません。日本にも多くのダムや堰がありますが、撤去の話はあまり聞かないように思います。だからこそ、こうした研究が海外で先に進むことで、日本にどういう影響があるのかを考えさせられます。
🔗 論文(Journal of Applied Ecology・2026年10月1日): https://doi.org/10.1111/1365-2664.70593