自然の状態の測り方×共通の物差し

2026-10-15

自然の状態の測り方×共通の物差し 図版1

Nature Positive Initiative(NPI)が10月13日、自然の状態を測る共通の物差し「State of Nature Indicators and Metrics」を公表しました。NPIとSBTNの発表によると、同じ日に、TNFDが企業に勧める自然の評価の手順(LEAP)の改訂版と、SBTNの自然の目標設定の手法の第2版も出ていて、どちらも関係する部分にこの指標を組み込んだとのことです。13日には3者の合同ウェビナーもあり、私も視聴しました。10月10日の投稿の最後で触れた指標です。

この指標で大事だと思ったのは、何を固定し、何を選べるようにしたかです。

・固定したのは4つの指標。既存の600以上の指標を見直して、生態系の広さ(広がっているか、縮んでいるか)、生態系の状態(良くなっているか、悪くなっているか)、種の絶滅リスク(その場所が世界の絶滅リスクにどれだけ関わるか)、種の個体群(いる種の個体群は健全か)の4つに絞った。長く変えない前提です

・選べるようにしたのは、測る細かさ。準備段階・中程度・高の3段階があり、準備段階なら、自然か自然でないかの2つに分けるところから始められる。どの段階を使うかは、基準をつくる側や企業が選び、細かさの条件や使うデータは技術の進み具合に合わせて更新するとしています。最低限の段階を義務にはしないかわりに、時間をかけて中程度へ進むよう歯止めを置いています

・測る範囲は、自社が管理する拠点と、その周りの景観(海なら海域)の2つ。拠点まで追えない調達先でも、周りの景観で測れるようにするためだと説明しています

新しい報告の枠組みではなく、既存の基準や手順に組み込むための最小限の物差しという位置づけです。29社が試していて、生態系の分類や、拠点の外の土地に入って現地で確かめることが難しかったと報告されています。一方で、多くの企業はいちばん粗い段階を自動的には選ばず、中程度や高を選んだそうです(自然の指標を扱った経験のある企業が多かった)。

私がもう1つ大事だと思っているのは、2年前の最初の案からの変化です。COP16の時期(2024年10月)に意見募集にかけられた最初の案では、周りの景観の「完全性(インタクトネス)」が独立した指標の1つでした。最終版では、周りの景観の状態は生き物のすみか同士のつながりで測る形になり、完全性は必ず測る指標からは外れています。あわせて、自然と半自然を分けて報告する要件もなくなり、人の手が入りながら自然の特徴が残る生態系も、生物多様性条約の定義に沿って「自然の生態系」に含めて測ることになりました。

ただし、田んぼや人工林、耕作地は「人為的な生態系」として生態系の指標の対象外です。これらには、種の指標を使い、圧力や対応の指標と組み合わせる選択肢が示されています。一方で、草地などのうち、産業化以前からあるものや生物多様性にとって重要なものは「自然」に含めてよい、という注記もあります。

技術報告書が理由として書いているのは、試行での分類の難しさや、国際的な生物多様性の目標の指標とそろえることです。ただ私は、日本の関係者の丁寧な対話や、今年7月に熊本で開かれたグローバル・ネイチャー・ポジティブ・サミットで、海外の多くの関係者が日本の自然に実際に触れたことも、この変化の背景にあったのではないかと受け止めています。日本の里地・里山・里海のように、人が手を入れ続けることで保たれてきた自然は、手つかずに近いほど良いという物差しだけでは測りきれないからです。日本を含むアジアモンスーンの地域の自然を把握し、よくしていくうえで、とても大事な変化だと思います。

何を問うかを固定して、どの細かさで答えるかを選べるようにしたこと。そして、人が関わってきた自然も同じ物差しの上で見られるようにしたこと。この2つで、粗いデータから始めた企業も、細かく測った企業も、同じ問いの上で比べられるようになるのだと思います。データが揃うのを待つのか、粗くても同じ物差しで始めるのか。自然への依存や影響を説明しようとしている企業にとって、その判断の材料になりそうです。

🔗 NPIの発表(2026年10月13日): https://www.naturepositive.org/news/latest-news/landmark-state-of-nature-metrics-launched/
🔗 指標・測定ガイダンス・技術報告書: https://www.naturepositive.org/metrics/