EVの電池ケース×資源循環/経済安全保障

2026-10-15

EVの電池ケース×資源循環/経済安全保障 図版1

電気自動車(EV)は電池が重いぶん、車体を軽くしたい。ただ、軽くするための素材は、使い終わったあとに資源へ戻すときの扱いにも影響します。カリフォルニア大学バークレー校と米ローレンス・バークレー国立研究所のチームが10月14日に出した論文(Environmental Research: Infrastructure and Sustainability)は、バンパー、ドアパネル、車内のコンソール、電池ケースの4つの部品について、重さ・費用・温室効果ガス・資源の循環を並べて比べています。

著者の結論は、樹脂で車を軽くすること自体は、良いとも悪いとも言えないというものでした。決めるのは、①強さを保つための設計の変更、②解体して素材を分けられるか、その費用、③回収したものを新品の代わりに使える技術があるか、の3つだとしています。

・バンパー(ポリプロピレン)や車内のコンソール(ABS樹脂)は、いまの素材がすでにほぼ最適。置き換える余地が大きいのは、金属が使われている重い構造部品

・中でも電池のケース。鋼製は85.9kg、炭素繊維で強化した樹脂なら18.4kg

・ただし、資源の循環の度合いを表す指標(1に近いほど循環的)は、鋼の0.925に対し、炭素繊維の樹脂は0.331、ガラス繊維の樹脂は0.238。回収したガラス繊維や炭素繊維は、コンクリートの充填材など価値の低い用途に回る可能性があるためです

・化学的に元の原料へ戻せる新しい樹脂(PDK)を使うと、解体した場合で0.979。ただ、PDKは製造の成熟度がまだ低く(技術の成熟度を9段階で表すTRLで3〜4)、車の部品としては実証されていません。論文自身も、PDKを材料の評価に使ったのは初めてだと書いています

使い終わった車を破砕すると、16〜25%ほどは破砕くずになって多くが埋め立てられ、EVは樹脂や複合材が多いぶん、この割合が大きくなりがちだそうです。解体すれば素材は分けやすくなるけれど、人手と時間がかかる。論文は、素材の表示やデジタル製品パスポートで新しい素材の部品を見分けて仕分けることや、回収した樹脂の価値に応じて解体する側に支払う仕組みが要るかもしれない、とも書いています。

ここから考えたのは、軽くすることと資源に戻すことの両立は、素材の選び方だけでは決まらないということです。どの部品を、誰が、どこで外し、何の情報を頼りに分けるのか。重要鉱物や素材の確保を考えるうえでも、使い終わったあとの流れまでを設計に入れておくことが効いてくるのだと思います。

🔗 論文(Environmental Research: Infrastructure and Sustainability・2026年10月14日): https://doi.org/10.1088/2634-4505/aea641