森林管理のカーボンクレジット×ベースライン

2026-10-15

森林管理のカーボンクレジット×ベースライン 図版1

森の木を伐る時期を遅らせるなどして、森に炭素を多く蓄える「森林管理の改善」は、カーボンクレジットの種類の1つです。その削減量は、「この事業がなかったら森はどうなっていたか」という想定(ベースライン)との差で決まります。ただ、事業がなかった場合の森は、実際には観察できません。

米国のザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)などの研究者が10月8日に出した論文(Frontiers in Forests and Global Change)は、米国東部の4地域・2つの森林タイプで、ベースラインの置き方を5通りに変えて、同じ事業の削減量を計算し直しています。

・置き方・地域・森林タイプの組み合わせで、見積もった削減量は5倍以上違った(1haあたり年にほぼゼロから約5トン)

・いちばん大きく効いたのは、「事業がなければ必ず伐っていた」と置くか、地域で実際に起きている伐採の確率(20〜90%)を混ぜて置くか

・次に効いたのは、ベースラインを最初に固定するか、5年ごとに実際のデータで更新するか。「必ず伐っていた」と置いて固定した方法は、確率を混ぜて更新する方法の平均より、約2.7倍多く見積もった

・一方、確率を混ぜて更新するベースラインどうしでは、モデルで推計するか現地で測るか、似た森を統計的に選ぶか無作為に選ぶかで、大きな差は出なかった

米国のインフレ抑制法には、気候に配慮した森林管理への投資も含まれています。著者は、その効果を「必ず伐っていた」と置いて固定する方法で測れば、2030年までに2,250万〜2,750万トン多く見積もりかねないと試算しています。そして、方法によらずクレジットの価格が同じなら、事業者が厳しい方法を選ぶ動機は生まれにくい、とも書いています。固定したベースラインには、結果の見通しが立ちやすく、慎重な土地所有者や資金の出し手が参加しやすいという面もある、と断ったうえでの指摘です。

この研究では、米国東部の4地域・2つの森林タイプで、森林管理の改善による削減量が、測る対象の森より、比べる相手の「なかった場合の森」をどう置くかで大きく動きました。クレジットを買う企業や金融機関にとっては、何トン削減かと並べて、伐採の確率をどう置き、いつ更新するのかを確かめることが、数字を受け取る前の最初の確認になりそうです。

🔗 論文(Frontiers in Forests and Global Change・2026年10月8日): https://doi.org/10.3389/ffgc.2026.1940074