自然データ×自治体の業務記録/環境情報化

道路で動物が死んでいたら、市役所に連絡して回収してもらう。多くの自治体で行われているこの日常業務の記録を、自然のデータに整え直した研究が公開されました。森林総合研究所などのグループが、茨城県つくば市に市民から寄せられた回収依頼の記録を確かめ直し、ロードキル(動物の交通事故死)のデータベースにしたものです(10月5日発表、論文はScientific Data)。
関わっているのは3つの主体です。
・市民:困りごととして市に通報する
・市と委託業者:死骸を回収し、種・日付・場所を記録する
・研究者:手書きのメモや現地の写真、作業報告を精査し、写真から種を確かめ直す
期間は2005〜2007年と2016〜2025年の計11年。1万4,249件の通報記録のうち、位置が不確かなものや無効な報告を除いた1万1,464件を、有効なロードキルの記録として整えています(無効な報告も、どれだけ除かれるかを見積もれるよう論文のデータには残しています)。いちばん多かったのはネコ(4,348件)で、タヌキ、ハクビシン、アライグマと続きます。アライグマはこの10年で、件数も範囲も急に広がっていました。
研究グループはこれを「意図せざる市民科学」と呼んでいます。自然のためではなく日常の困りごととして通報された記録なので、生き物に関心のある人だけに偏らず、飽きにも左右されずに長く続く、という意味です。市民はネコ、業者はタヌキと記録したものを、研究者が写真からアライグマと判定した、といった見分けのずれまで残っていて、市民の記録の確かさを測る材料にもなるそうです。
一方で、通報されなかった死骸は残らないので、実際の数より少ない可能性があり、見つけやすい場所に偏りうる、とも断っています。
10月13日からは、環境省が外来のカミキリムシの被害情報を個人や事業者からも集める仕組みを試しています。あちらは国が意図して集める仕組みで、こちらは困りごとの通報が結果として残ったものです。自然のデータは新しく測るだけでなく、すでに業務の中にある記録を整えることでもつくれるのだと思います。報道発表によると、こうした記録は全国の自治体にあるものの、多くは使える形になっていないそうです。
🔗 森林総合研究所の発表(2026年10月5日): https://www.ffpri.go.jp/press/2026/20261005/index.html
🔗 論文(Scientific Data): https://doi.org/10.1038/s41597-026-08027-z